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武田薬品・沢井製薬…製薬各社が包装材見直し、プラごみ廃棄増加が課題

武田薬品・沢井製薬…製薬各社が包装材見直し、プラごみ廃棄増加が課題

PTPシートを分離した後の素材(武田薬品工業提供)

製薬各社が医薬品包装材による環境負荷低減に向けた取り組みを進めている。国内の医療関連市場は高齢化などにより拡大傾向にあり、それに伴って医薬品の包装材として使われる「PTPシート」といったプラスチックごみの廃棄量増加が課題となっている。各社はPTPシートの再利用や素材を見直すなどし、廃棄物や二酸化炭素(CO2)排出量の削減につなげる。(安川結野)

武田薬品工業はオリックス環境(東京都港区)と連携し、PTP包装材の再利用を始めた。PTPシートをプラスチックとアルミニウムに分離し、武田薬品工業の光工場(山口県光市)から排出される年間約100トンのPTPシート廃材のうち約95トンを再利用する。焼却処理と比較してCO2排出量を削減でき、担当者は「海外とも情報共有し、廃材の再利用の取り組みにグローバルで取り組む」と力を入れていく。

沢井製薬(大阪市淀川区)も、鹿島工場(茨城県神栖市)でPTP包装の廃材リサイクルに乗り出した。PTPシートのプラスチック部分とアルミ部分を剝離、建材やオフィス向けタイルカーペット原料やアルミ製品に再利用する。焼却処理に比べCO2の発生量を約94%削減できるとみる。

従来プラスチック部分とアルミ部分をリサイクルできる状態に剝離できず、シートを焼却して灰をコンクリートの原材料の一部に用いていた。

また、素材自体を改良する動きも見られる。アステラス製薬は一部医薬品について、PTPシートの原料の50%をサトウキビ由来に変更した。協和キリンも、バイオマス素材を活用できるか検証を進めている。ただ、湿気の通しやすさや耐久性などに影響があるため「全ての医薬品の包装材をバイオマス素材で代替することは難しい」という。

製薬業界では2022年にアステラス製薬とエーザイ第一三共、武田薬品工業の4社が、医薬品包装分野での環境負荷低減の取り組みを進めるために連携するなど、企業横断的な取り組みも進んでいる。技術や情報共有を進め、各社が掲げる環境負荷低減の目標達成を目指す。

日刊工業新聞 2023年09月04日

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