船舶設計に参画する三井物産、フィンランド企業の技術生かす
造船・機器メーカー連携推進
三井物産は船舶の推進力や発電の設備を統合的に設計するシステムインテグレート事業に資本参画する。船内のエネルギー利用の効率化に強みを持つフィンランドの設計会社ウィーテックソリューションズに出資し、同社の製品や設備実装の技術を国内企業に展開する。カーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けて高度化する船舶システムの最適設計を提案し、造船会社や船舶機器メーカーの連携を推進する。(編集委員・田中明夫)
造船業界では国際海事機関(IMO)のCN目標の設定を受け、アンモニアなどへの燃料転換や省エネルギー化に向けた開発競争が激しさを増している。特に船舶竣工量で日本を上回る中国や韓国など海外では、複雑化する船舶設計を担うシステムインテグレーターが欧州勢を中心に台頭。海運企業が造船会社に依頼していた設計をシステムインテグレーターが直接受注して付加価値を創出するなど、業界構造が大きく変わりつつある。
船舶販売などを手がける三井物産は構造変化を踏まえ、年内にもシステムインテグレーターのウィーテックに10億円超を出資し、同社の装置や電気制御技術などを展開する。システムインテグレーターが不在とも言われる国内船舶業界に「ウィーテックを引き入れてパートナーシップを形成し、海事クラスターの競争力強化に貢献していく」(小河冬樹船舶海洋第一室室長補佐)とする。
ウィーテックが提供する軸発電機は永久磁石を使い推進エンジンの回転を効率的に電力変換するため、従来の軸発電機よりもエネルギー効率が3―4%程度高い。船舶エンジンは、馬力優先で回転が遅い推進用とは別に発電用も搭載するのが一般的だが、燃料転換に伴って1基に統合する動きがあり、軸発電機の商機が生まれている。「アンモニアなどの活用で従来よりも燃料単価が上がる中では省エネの経済効果も大きい」(同)とみて拡販を狙う。
また、蓄電技術の発展で船舶の電動化が進む段階では、蓄電池開発のパワーエックス(東京都港区)などを資本提携先に持つ三井物産のネットワークがさらに生きる。同社は中期経営計画で、成長分野のコア事業と周辺領域の組み合わせによる事業群形成を推進しており、国内メーカーの装置をウィーテックの設計に組み込むなどして、次世代船舶のクラスター強化を後押しする。
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