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三井物産・丸紅…食の安定目指す商社、養殖魚の供給網構築

三井物産・丸紅…食の安定目指す商社、養殖魚の供給網構築

三井物産は閉鎖循環式のサーモントラウト陸上養殖プラントの展開を推進する(FRDジャパン提供)

商社大手が養殖魚の供給網の構築に力を入れている。三井物産は国内でサーモントラウトの陸上養殖を手がける子会社FRDジャパン(さいたま市岩槻区)に約78億円を追加出資し、たんぱく質需要が増えるアジア圏への展開も視野に入れる。丸紅は30度C近くの高い水温で生育し気候変動への適応力がある白身魚バラマンディ(ミナミアカメ)のベトナムからの輸入を始めた。世界人口の増加や気温上昇といった環境変化に対応して食の安定供給を目指す。(編集委員・田中明夫)

三井物産はFRDの増資210億円のうち78億5000万円を引き受けた。FRDはその調達した資金を千葉県富津市に建設するサーモントラウト陸上養殖の商業プラントの工事費などに充てる。これにより、生産能力を現行の年間30トンから2026年に同3500トンに一気に引き上げる計画だ。

サーモン事業は水温が低くフィヨルド地形によって波が穏やかなノルウェーとチリで海上養殖が盛んだが、排せつ物による海底汚染が問題となっている。一方、FRDは排せつ物由来の硝酸を除去する脱窒槽を開発し、水槽の1日の水替え量を従来の30分の1にあたる1%に抑えられる閉鎖循環式の陸上養殖を展開する。水温を15度Cまで冷やす電気代を節約できるため「夏場に操業できなかったサーモン養殖の年間運営が可能になる」(FRDの宮川千裕チーフマーケター)とする。

丸紅はベトナムの養殖白身魚バラマンディの国内大手回転すしチェーンへの販売が決まった(イメージ)

地下から低温の水をくみ上げる必要がないなど立地場所の制約が少ないことも生かし、気温が比較的高いアジア圏への展開も目指す。三井物産は「FRDは脱窒槽などの自社技術も持つため、ビジネス展開で伸びしろがある」(和山貴幸コーポレートディベロップメント・M&A推進室インベストメントマネージャー)とみる。

丸紅はベトナムで養殖されている白身魚バラマンディの輸入を開始した。海水温の上昇に伴う漁獲量の減少が懸念される中、バラマンディは30度C近くの高い水温環境で育つため「気候変動への順応性が高い」(生鮮食材課の吉田哲則氏)とし、持続的な供給で商機を狙う。

バラマンディは鯛に似た血合いと白身のコントラストが特徴で、このほど国内大手回転すしチェーンへの販売が決まった。欧米では高級魚として扱われ、国内大手量販店も調達を前向きに検討しているという。

供給元の米オーストラリス・アクアカルチャーは、ベトナムで生産能力が年間2万トンのバラマンディ養殖場を運営。生態系や水質の保全に配慮した生産体制を整え、養殖の国際団体である水産養殖管理協議会(ASC)の認証も受けている。丸紅は国内の独占販売契約の締結を検討していく。

双日は長崎県で手がけるマグロ養殖事業でセンサー活用による遊泳状況や尾数の把握を通じ、餌の量の効率化や出荷タイミングの最適化を進める。健康志向による水産食品需要の伸びを見込み、3月には10%出資していた冷凍マグロの加工販売を手がけるトライ産業(静岡市清水区)の100%子会社化を発表するなど供給網を拡充している。

三菱商事は22年にマルハニチロとの合弁で、サーモンの陸上養殖会社アトランド(富山県入善町)を設立した。同町に年間生産能力2500トン規模の施設を建設し、25年度の稼働と27年度の初出荷を目指している。

世界人口の増加を背景に食料需要の拡大や気候変動による生態系の変化が見込まれる中、いかにして効率的・安定的にたんぱく源を供給するかは重要な課題になる。商社の産業ネットワークを活用した流通網の構築や技術実装による水産養殖ビジネスの拡大に期待がかかる。

日刊工業新聞 2023年08月28日

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