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宇宙・通信・防衛…社会インフラで稼ぐNECの戦略

宇宙・通信・防衛…社会インフラで稼ぐNECの戦略

衛星間通信のイメージ(宇宙航空研究開発機構〈JAXA〉提供)

NECは航空・宇宙、通信、防衛の3領域を中核とする社会インフラ事業で新ビジネスの創出に力を注ぐ。3領域の事業連携を強め、衛星間通信の広帯域化や、内閣府が策定した「宇宙安全保障構想」に沿った研究開発の促進など、宇宙事業のデジタル変革(DX)に挑む。通信領域では子会社の米ネットクラッカーをテコ入れし、海外中心に通信業界のDXを先導する。安定志向だった社会インフラ事業を成長軌道に乗せる方針だ。

まずは通信業界のDXニーズに応え、ネットクラッカーを先兵として、同社が30年間に及ぶ実績を持つ運用管理サービスと生成AIを組み合わせ、国内外で新展開を目指す。

同社は9月に生成AIで得たデータを安全に管理するプラットフォーム(基盤)と、顧客データを匿名化するソフトウエアやナレッジ(知財)管理などの商材を市場投入。海外では既に通信事業者との商談が始まっているという。

衛星領域では衛星自体を作る従来型のビジネスに加え、通信技術との一体化を強めることなどにより、BツーB(企業間)向けの新技術の実用化やサービス展開にも力を注ぐ。併せて安全保障を踏まえ、民需と官需の両方で新たな価値を見いだす。

社会インフラ事業は4月の組織改革で、宇宙・航空、防衛を束ねる「エアロスペース・ナショナルセキュリティ」と、通信事業者を対象とする「テレコムサービス」の二つのビジネスユニット(BU)に再編。全体を山品正勝執行役共同最高執行責任者(Co―COO)が統括する新体制で再スタートを切っている。

インタビュー/DXテコに成長軌道・Co-COOの山品正勝氏

社会インフラ事業の新戦略などを山品Co―COOに聞いた。(編集委員・斉藤実)

―航空・宇宙、通信、防衛の3事業を束ねる意義は。

「この3事業を持っていることがNECたるゆえんだ。無線や光の技術を衛星に応用するなど、研究開発を含め一体化することでシナジーが見込める。衛星間通信による光通信を用いて、(軌道上で多数の小型衛星を一体で機能させる)コンステレーション構想なども取り沙汰されている。日本の安全保障を支えるのが社会インフラ事業であり、航空・宇宙、通信、防衛は将来、当社のコア事業になるはずだ」

―衛星と防衛のシナジーも期待されます。

「衛星間通信はもとより、衛星と地上とのやりとりも重要だ。このほか、衛星から端末へのダイレクト通信など、いくつかのオプションを考えている。光通信は広帯域で遅延も少なく、防衛領域における作戦行動に生かせる。こうした技術は民需と官需の双方で可能性がある」

―今後の方向性は。

「社会インフラの中で将来のエンジンになるビジネスを作っていく。3事業ともDXをテコに成長事業に変えたい。もう一つ重要なのはカルチャーだ。社会インフラは『横ばいでよい』という意識があったが、これを変革する。NECを変え、世界を変える、という意識でやっていく」


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日刊工業新聞 2023年10月12日

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