成長けん引役〝赤信号点滅〟のNEC、IT・社会インフラで総力戦
NECは2025年度を最終年度とする5カ年の中期経営計画の達成に向けて、収益拡大のカギを握る成長事業を立て直す。けん引役としていた第5世代通信(5G)基地局事業が国内外とも設備投資の抑制などで苦戦を余儀なくされ、中計前半戦で赤信号が点滅。後半戦の23―25年度はビジネスユニット(BU)再編による新体制をベースに、事業領域を「ITサービス」と「社会インフラ」に分けて総力戦に打って出る。(編集委員・斉藤実)
「中計を実行する上で(23年4月に再編した)組織をこの先3年間は変更するつもりはなく、これで遅滞なく動けるはずだ」。森田隆之社長は中計後半戦に向けた覚悟を語る。
4月始動の新体制では、ネットワークサービスBUを「テレコムサービスBU」に改称し、通信事業者向けに特化。構造改革による投資の適正化などで、5G基地局の受注の期ズレによる収益悪化に歯止めをかけた。
ただ、成長事業の一角を担う「グローバル5G」は、23年度の調整後営業損益が150億円の赤字になる見通し。25年度目標の調整後営業利益190億円に赤信号が点滅した状態と言える。23年度は「費用コントロールなどで確実な改善」(森田社長)に取り組むものの、目標の見直しは必須だ。
これについて森田社長は「中期・長期の方向性は変わらないものの、場合によっては中計の見直しを行わなければいけないと考えている」と打ち明ける。その上で「25年度に5G事業で見ていた190億円の(調整後)営業利益を別の事業で稼ぎ出すということは十分にあり得る」と、中計の利益配分の見直しを示唆する。
一方、新体制では海外事業を束ねていたグローバルBUを解消し、その中核を担っていたデジタルガバナンス/デジタルファイナンス(DG/DF)をBUとしてくくり出すなど、攻め手も怠ってはいない。
注目は全社横断の組織である「デジタルプラットフォームBU」の新設。同BUにシステムプラットフォームBUを統合するなど、主要な技術やリソース(資源)を集結させ、ITサービスの共通基盤の役割を強化した。
同BU内には生成人工知能(AI)の専門家チームも設置。「ビジネスユースで安心して生成AIを利用できるように誤情報や著作権に関する課題、汎用的な生成AIと個別の環境の使い分けなどの準備を進めている」(同)という。
開示セグメントとして、ITサービスを前面に打ち出すのは11年ぶり。大くくりで束ねることでBU間の重複開発を抑えるとともに、BUの壁を越えて連携しやすくした。
ITサービスは「コアDX」などで高い成長が見込まれる。森田社長は社内に対して、トップラインを追うのは意味がないとし、「利益成長」重視の号令をかけた。
一方、社会インフラでは新設の「エアロスペース・ナショナルセキュリティBU」が注目される。経済安全保障の機運や、政府による防衛費の増額を踏まえ、宇宙・防衛と通信の一体化で相乗効果を狙う
中計後半戦は森田体制の真価が問われる。