ニュースイッチ

原子力機構、火山下のマグマ通り道 現地調査なしで推定手法開発

日本原子力研究開発機構の西山成哲博士研究員らは、噴火しやすい位置を予測するための情報となる火山下のマグマの通り道を現地調査なしに机上で推定する手法を開発した。一般公開されている地形データを用いて、過去の火山活動で形成されたマグマの通り道の変化を長期間にわたって推定できる。火山防災や高レベル放射性廃棄物の地層処分の安全評価に役立つ。専門家でなくとも使えるため、自治体などの防災担当者による事前検討などにも利用できる。

将来どこに火口ができるかを知るには、地下のマグマ溜(だ)まりから火口へつながる火道の位置や、火道から派生・伸展したマグマが固まった放射状岩脈の発達方向を知る必要がある。これには専門家の現地調査が必要だった。

そこで研究グループは、活動履歴がよく調べられている22火山を対象に地理情報システム(GIS)を用いて地形を解析し、地形と火道などの関係性を解明。これをもとに、地形データから火道や放射状岩脈を推定する手法を構築した。検証の結果、この手法で推定した放射状岩脈の卓越方位と実際の火口の分布傾向が合致した。

具体的には、等高線から求めた山体の伸び方向から、放射状岩脈がよく発達する方向を求められることを示した。さらに、山頂以外を覆う等高線の面積から、マグマの通り道の変化の程度を示す火道の安定性を判別できることを確かめた。

マニュアルは原子力機構の「研究開発成果検索・閲覧システム」(JOPSS)で見ることができる。

日刊工業新聞 2023年10月09日

特集・連載情報

原子力機構の『価値』
原子力機構の『価値』
原子力といえば原子力発電がイメージされますが、燃料電池や自動車エンジンの開発にも貢献する基幹技術です。イノベーション創出に向け、「原子力×異分野」の知の融合を推進する原子力機構の『価値』を紹介します

編集部のおすすめ