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なぜ古代ローマ時代のコンクリート構造物は長持ちなのか、米大が解き明かしたこと

米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学の研究チームは、2000年以上前に作られた古代ローマ時代のコンクリート構造物が持つ高い強度と長持ちの謎を解き明かした。現代のコンクリートやこれまでの通説とはまったく異なり、材料に生石灰(酸化カルシウム)を使い、それが頑丈さや自己修復機能をもたらしたという。

研究にはイタリアとスイスの研究機関も参加。成果は米科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載された。同チームがイタリアに現存する古代ローマの構造物の材料を分析したところ、石灰岩を焼いて得られた生石灰を、火山灰が原料の粉体(ポゾラン)や水と直接混合。その際に生じる高温を利用し、強度の高いモルタルを作っていたと結論づけた。

一方で材料にはミリメートル大の白い塊があちこちに見られ、従来は混合時の失敗と考えられていた。研究チームは高温の混合工程で残ったカルシウム成分の塊であり、これが重要な役割を果たすと想定。再現実験により、小さなひび割れや穴ができた場合、水との反応でこの部分の炭酸カルシウムが再結晶化し、徐々に穴を埋めることを突き止めた。

現代のコンクリートでは数十年で劣化が始まり、セメント製造は温暖化ガス排出の約8%を占める。研究チームでは古代の材料製造法が気候変動防止にも役立つとみて、技術商用化に向けた準備を進めているという。

日刊工業新聞 2023年01月13日

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