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大学図書館はDXでどう変わるか

文部科学省はコンテンツや職員スキルのデジタル変革(DX)に関し、“デジタル・ライブラリー”に向けた大学図書館改革の方向性を2023年度内にまとめる。学術論文や研究データのオープンアクセス(OA)や、“1大学1図書館”にこだわらないコンソーシアム方式での運営についても採り上げる。OAなどの調査に向け、24年度予算の概算要求で1億円を計上した。

文科省は30年をめどとしたデジタル・ライブラリー構想を掲げている。日本語蔵書のデジタル化や、OAでは学術論文出版社との交渉や機関リポジトリがテーマになる。加えて研究データの管理・活用が、政府から新たに求められている。これらは大学の研究力強化と関わり、伝統的な図書館像は大きく変わる見込みだ。

また新型コロナウイルス感染症の拡大がきっかけで、物理的な場所に制約されない図書館の在り方が注目されている。一方で低学年の学生らの学習支援空間「ラーニングコモンズ」の役割も依然、大きい。

議論はこうした大学図書館のサービス、人材育成、場を対象とする。図書館職員の人員の充実が難しい中、地方小規模私立大学などでは、1大学1図書館を越えた大学連携モデルも考えられる。さらに全国の機関リポジトリやデータ管理を手がける国立情報学研究所や、プレプリントサーバ「Jxiv」(ジェイカイブ)を始めた科学技術振興機構などの機能を活用することも重要になりそうだ。

文科省の科学技術・学術審議会の部会は、1月に「オープンサイエンス時代における大学図書館のあり方について」を公表。4月には研究振興局長の私的諮問会議「『2030デジタル・ライブラリー』推進に関する検討会」が発足した。課題を整理し、24年度から調査に入る計画だ。

日刊工業新聞 2023年09月25日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学の図書館職員は、『本当にまじめで、コツコツと仕事をしていく人が多い』と聞く。図書館利用の教職員や学生に信頼される人柄がうかがわれる。一方でデジタル化や研究データ管理、出版社との交渉などは、従来と異なる能力が求められる。ハードルはやや高いが、まじめな点を生かし頑張って新たなスキルを身につけて、次の時代のリーダーになる意識を育ててほしい

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