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SMR開発の米社に出資した中部電力の狙い

SMR開発の米社に出資した中部電力の狙い

米ニュースケール・パワーへの出資を説明する中部電力の佐藤専務執行役員

中部電力は7日、次世代原子炉の小型モジュール炉(SMR)を開発する米ニュースケール・パワーに出資すると発表した。国際協力銀行が持つ株式の一部を取得する。技術情報の取得を進めた上で、中部電としての展開を判断する。安全性などを高めた次世代炉の研究開発が活発化する中、海外企業のSMR開発に国内電力会社が関与を表明したのは初めて。

中部電の佐藤裕紀専務執行役員は7日、「原子力の持続的な活用に向けてあらゆる選択肢を確保することが重要」と述べた。

中部電はニュースケールの株式を、日本企業による出資の共同事業体を通じて間接的に保有する。取得額や出資比率については非開示とするが、「国際協力銀行が保有していた株式の50%未満程度の株式譲渡を受けた」(佐藤専務執行役員)。ニュースケールと技術情報を交換した上でSMRにおける事業の方向性を定める。

ニュースケールが開発するSMRは格納容器と圧力容器を一体としており、工場で製造して陸路や海路で運んで設置する構想。サイズは高さ23メートル×幅4・5メートルで、一般的な原子炉と比べて小さい。1基当たりの出力は7万7000キロワットで、電力需要に応じて複数基を組み合わせる。建設から運転開始までの期間が従来と比べて半分程度の3年に短縮できるという。

ニュースケールは米国のアイダホ州で初号機の運転を2029年に始める準備を進めている。米国原子力規制委員会による原子炉の設計認証も取得した。世界では17社が導入に向けた検討を進める契約を結んでいるという。

日刊工業新聞 2023年09月08日

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