中国電力は過去最大1553億円…電力大手8社が当期赤字、収益力どう高めるか
電力大手10社の2023年3月期連結決算の当期損益は中部電力と関西電力を除く8社が赤字だった。ロシアによるウクライナ侵攻や為替の円安の影響で、火力発電の燃料に使う液化天然ガス(LNG)と石炭価格が高騰し、各社の業績が悪化した。24年3月期の予想については東京電力ホールディングス(HD)など国に家庭向け規制料金の値上げを申請中の7社が未定とした。
中国電力は当期損益が過去最大の1553億円の赤字となり、8社のうち最も赤字額が大きかった。燃料費の高騰による収益環境の悪化に加え、公正取引委員会から電力カルテルによる課徴金として707億円の納付命令が出たことを受け、同額を特別損失に計上したことが響いた。滝本夏彦社長は「料金見直しや島根原子力発電所2号機の再稼働などで収益力を高めたい」と述べた。
東北電力は当期損益が1275億円の赤字だった。燃料高や円安に加え、市場から調達する電力価格の上昇が響いた。業績の悪化で九州電力は夏に議決権のない2000億円の優先株発行を決めた。経常損益が66億円の赤字だった関西電力の森望社長は「燃料価格や為替変動など、想定が難しい1年だった」と振り返る。
24年3月期予想については、家庭向け規制料金の値上げを申請中の7社が公表を見送った。国の審査が長期化し、値上げの実施時期や値上げ幅が見通せないため。
東北、北陸、中国、四国、沖縄の5電力は4月からの規制料金の値上げを申請している。北陸電力は値上げの遅れで「1カ月当たり15億円程度の影響がある」(松田光司社長)。北海道と東電HDは6月からの値上げを申請。東電HDは値上げの時期が1カ月遅れた場合、業績に150億―200億円程度のマイナスの影響があるとしている。
他方、値上げ申請をしていない中部、関西、九州の3社は当期黒字の確保を見込む。関西電力は燃料価格の低下と原子力利用率の上昇が進むとして、売上高と各利益ともに過去最高を見込む。6―7月に高浜発電所1、2号機(福井県高浜町)が予定通り再稼働すれば、原子力利用率が向上し、経常利益へ1590億円のプラス効果となる。
九州電力も原子力発電の設備利用率が90・5%(前期は57・7%)に上昇することが経常損益を1290億円押し上げる。池辺和弘社長は規制料金について原子力の稼働状況などを理由に「値上げ申請せずに済むなら、今の料金でやっていきたい」と維持する方針をあらためて示した。
燃料価格は低下傾向にあるが、不確実性が続く。関西電力の森社長は燃料価格を含め「業績予想の前提がどう変わるか見極めないといけない」とする。四国電力の長井啓介社長は「中長期では電気事業以外の情報通信や国際事業を中心に収益拡大を目指す」とした。