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実は温度・湿度が最適…「ダムでお酒熟成」に注目

実は温度・湿度が最適…「ダムでお酒熟成」に注目

中部電の高根第2ダム

岐阜・富山の特産品に

酒を熟成させる場所の一つとしてダムが着目されている。中部電力は8月上旬、水力発電所の高根第2ダム(岐阜県高山市)でウイスキーを熟成させる取り組みを同市内の酒造会社と始めた。富山県では関西電力や国土交通省のダムで熟成させた日本酒が販売された。ダムは温度や湿度が1年を通じて安定しており、長期熟成に適しているという。ダムと酒の組み合わせは、新たな特産品作りに一役買う存在となりそうだ。(名古屋・永原尚大)

グラスに注がれた透明なウイスキー。樽(たる)で熟成する前の「原酒」と呼ぶ。アルコール特有のツンとした味わいが広がったと思うと、口の中が熱くなるのを感じた。樽で数年かけて熟成すると、色や味わいが豊かに変化していくという。

中部電と舩坂酒造店はウイスキーをダム内部に運び込み、熟成させる取り組みを始めた

中部電とウイスキー製造を手がける舩坂酒造店(岐阜県高山市)は8月、高根第2ダムの堤の内側にある空洞を使いウイスキーの熟成を始めた。年間を通して空洞の温度は約15度、湿度は約90%。「安定して低温で貯蔵できるのでまろやかな味わいになるだろう」。舩坂酒造店の有巣弘城社長は推測する。湿度が高いため、熟成の過程で酒が蒸発しにくい点も良い効果を与えそうだという。

同ダムの空洞は建設時のコンクリートの使用量を削減するためのもの。「発電所の運営で活用することはほとんどない」(中部電担当者)ため、貸し出しても支障は生じにくい。中部電は、発電所の運営は地域の協力で成り立っているとして提供を決めたという。

ダムを使った熟成は日本酒にも適している。富山県酒造組合や関電、国交省などは2020年、富山県で製造した日本酒を同県内のダムで熟成させる取り組みを始めた。黒部ダム(富山県立山町)など5カ所の施設で、酒造会社15社の日本酒を約1年熟成させる。この取り組みではダム内部のトンネルを中心に使っている。売れ行きは好調で、熟成させる本数は毎年増えている。

天然の冷蔵庫として活用されはじめたダム。地域の酒をその地の施設で熟成させる取り組みが広がることで、地域や特産品としての魅力は味わい深くなっていきそうだ。

日刊工業新聞 2023年08月18日

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