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カナダ新興の独自技術活用…「地熱商用プロジェクト」に中部電参画、日本への影響は?

独自技術で開発エリア拡大

カナダのスタートアップのエバーテクノロジーズ(ジョン・レッドファーン社長)は、独自の地熱活用技術を使う初の商用プロジェクトをドイツで始める。地下から蒸気や熱水を十分に取り出せなくても地熱を活用できる。総事業費は数百億円規模で、2026年8月に全面的に運転開始する。日本からは中部電力が参画し、「知見を得て、横展開に向けて布石を打つ」(佐藤裕紀専務執行役員)。地熱活用が進まない日本に“熱”を与える存在となるか。(名古屋・永原尚大)

エバー社は地下に送った水を地熱で加熱し、その熱を地上で取りだして発電や熱供給に使う技術を持つ。地下から採取した蒸気や熱水を使う従来の地熱活用と異なり、プラントを開発できる地域は大きく広がるという。

ドイツ・バイエルン州で開発する商用プラントは、発電の最大出力が約8200キロワット、熱供給は同約6万4000キロワット。最大の発電電力量は年間約7700万キロワット時で一般家庭1万8000世帯分に相当する。熱供給量は同約5600万キロワット時で同約20万世帯分だ。

7月上旬、掘削工事が始まった。地下約5000メートルで網目状に張り巡らせた横穴と地上の熱交換器を結ぶ導管内で水を循環させる設備を置く。得た熱を周辺地域に供給したり、沸点が低い物質イソブタンを熱交換器で蒸気にしてタービンを回し発電したりする。電力需要が低いときには地下に蓄熱して需要調整にも使える。

「地熱の位置付けをドラスチック(抜本的)に変える可能性のある技術だ」。中部電の佐藤専務執行役員はこう評価する。同社は7月、数十億円を拠出して同プラントの開発に参画。開発を進める事業会社への出資比率は4割で非常勤取締役や常駐の技術者を派遣する。

ドイツ・バイエルン州で26年に全面運転開始を予定する地熱活用プラントの完成予想図

なぜ中部電はエバー社を評価するのか。背景には地熱特有の課題がある。

一般的に地熱活用はリスクの高いプロジェクトと認識される。熱水や蒸気が出てくるかは掘ってみないと分からないためだ。失敗する可能性は否定できない。一方、エバー社の技術は地上から送った水を温める仕組み。地下に熱源さえあれば良い。火山性の地層でなくても開発できるため「地球を湯沸かし器にできる」(佐藤専務執行役員)。

エバー社は世界各国に地熱プロジェクトの展開を計画している。その中には日本も含まれており、同社は日本法人を設立している。火山性の日本の地層にも適用できるか調査は必要だが、地熱活用の機運を高めるポテンシャルを秘める。

そもそも日本は世界第3位の地熱資源量を持つ国だ。1位の米国や2位のインドネシアに匹敵する2347万キロワットの資源量を誇る。だが、発電設備容量を見ると世界第10位にとどまる。国の「第6次エネルギー基本計画」によると30年度に設備容量を倍増させる計画だ。しかし、30年度の電源構成に占める地熱の割合は1%程度。佐藤専務執行役員は「地熱資源大国がこの有様か」と嘆く。

エバー社の技術を日本に適用することはできるか。地熱活用の機運を高める存在になることが期待される。

日刊工業新聞 2023年08月02日

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