切り込み隊長、指揮者…工場のトップが持つべきリーダーシップとは?
いつの時代も、現場の進化を牽引するのは工場のトップ=工場長であり、工場長の質が工場の将来を左右するとも言える。工場長のレベルを高めるための必須要素がまとめられた書籍『新装版「工場管理」基本と実践シリーズ 工場長スキルアップノート』から、ビジョンの実現に必要な「リーダーシップ」の一部を紹介する。
⑴リーダーシップとは
社会の動き、顧客の動きをしっかり見据えることによって、これからのあるべきコストや品質、あるべき組織の姿、あるべき生産管理の姿が見えてくる。それをビジョンと呼ぶ。
ビジョンは、絵に描いた餅であってはならない。それを実現しなければ意味がなく、そのためには実現させるための能力が要る。それがリーダーシップである。だから、リーダーシップとは情熱であり、信念であり、責任である。
⑵リーダーシップの型
リーダーシップのあるべき姿と言っても、人によってさまざまである(表1,2)。一律に規定すべきものでもないが、ここでは2つのケースを見てみよう。
①切り込み隊長型
全員の先頭に立って進撃するタイプ。しかし勇ましいだけではない。逃げない。敵の矢面に自ら立ち、リスクを一身に背負う。思わぬアクシデントが起きても、とっさの判断で対応する。いささか事前の深慮や部下とのコミュニケーションに欠ける面があるが、いざという時に他人に責任をかぶせ、逃げてしまうリーダーよりはるかに信頼される。
②オーケストラの指揮者型
うるさい部下たちを手際良く手なずけ、頭を使って組織化していくタイプ。技術的にも尊敬され、管理にも長けているが、時にはワンマン的な一面も出る。しかし、頑固一徹だけで、気に入らないと怒鳴り散らすばかりのリーダーより、はるかに組織づくりがうまく、したがって実績を上げる。
ちなみに「孫子の兵法」には、勇猛果敢ではあるが思慮に欠ける将帥は「殺される」(必死可殺也)、理知的で思慮深いが優柔不断の将帥は「とりこになる」(必生可虜也)、とある。
【工場長のセルフチェック】
1.意思決定にあたっては、できるだけ客観的な分析や意見聴取をしつつも、最後は自分自身の意思で決断しているか。
2.客観的分析にこだわるあまり、優柔不断になったり、タイミングを失したりしていないか。
3.部下や周囲に責任を保証させたり、責任を負わせたりするような意思決定をしていないか。
4.自分のビジョンを実現するために強いリーダーシップを発揮しているか。
5.自分らしいリーダーシップを持っているか。
6.人を育てるにあたっては、人間性を高めることを目的として、鍛え、励まし、慰め、叱っているか。
7.甘やかしたり、厳しい躾を遠慮したりしていないか。
8.自らの背中を見習わせるよう、自分自身、心身を磨いているか。
(『新装版「工場管理」基本と実践シリーズ 工場長スキルアップノート』より一部抜粋)
<書籍紹介>
多様化時代に即した工場経営の必須スキルを総ざらいして体系化した。カイゼンを活性化させ、持続可能な成長を促すマネジメントの極意を平易に伝える。各項末に設けた「セルフチェック」により実践レベルが把握できる。2007年の発行後8刷した企画を新装化した。
書名:新装版「工場管理」基本と実践シリーズ 工場長スキルアップノート
著者名:工場長スキルアップ研究会 編
判型:B5判
総頁数:128頁
税込み価格:2,530円
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