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鉄道の防犯カメラ設置拡大…義務化視野、かさむコスト

鉄道の防犯カメラ設置拡大…義務化視野、かさむコスト

通信式防犯カメラのイメージ(西武鉄道提供)

近年電車内で起きた襲撃事件を受け、都市部を走る電車への防犯カメラの設置が拡大している。西武鉄道は2025年度末までに、南海電気鉄道は28年度末までに全車両へ設置することを決めた。JR東日本の首都圏や東急電鉄東京メトロなどは設置車両が大半となっている。国は3大都市圏で新車両への防犯カメラの設置を義務付ける方針で、設置が一層加速しそうだ。

西武鉄道は10月頃から指令所などで映像を確認できる通信式カメラの設置を開始する。現在主力の記録式カメラと違い、通信式はトラブル発生時にリアルタイムで映像を確認して迅速に対応できる。25年度末までに記録式と通信式を合わせて設置率100%とし、26年度末までに全て通信式に切り替える。

先行するJR東や東急などに続き、21年に車内で乗客への襲撃事件が起きた京王電鉄は23年度中に、小田急電鉄は25年度中に全ての車両に設置を終える計画だ。

6月に開かれた国の検討会では、利用者の多い3大都市圏を走る車両と全ての新幹線を対象に新車両への防犯カメラの設置を義務付ける方針が示されたという。

東海道新幹線は全編成に防犯カメラを設置

東京だけでなく、大阪ではJR西日本が「長大編成や駅間の長い列車への設置を優先する」(長谷川一明社長)方針のもと、設置を進めている。山陽新幹線は96%、北陸新幹線はJR西の車両で100%とほぼ全列車に導入。特急は4月末で約14%の整備率を23年度末に約70%に引き上げる計画だ。

大阪メトロは御堂筋線と中央線の2路線で導入を進めており、25年度末までに2路線の全列車に設置する計画。南海電鉄は1車両4台のカメラを基本とし、車内全体を見渡せるように配置する。搭載カメラは人工知能(AI)搭載のネットワーク対応型車内防犯カメラを選択した。

近畿日本鉄道京阪電気鉄道も一部で導入しており、今後も「車両の新造や更新のタイミングに合わせて順次増やす」(京阪電気鉄道)。阪急電鉄阪神電気鉄道は実証実験を実施、設置場所や撮影データの伝送状況などを確認しており「本格導入を前向きに検討している」(阪急電鉄)とする。

18年に車内で殺傷事件が起きたJR東海は、東海道新幹線の全編成に防犯カメラの設置を完了した。最新車両のN700Sは客室や通路に合計165台、N700Aは105台を設置。20年からは警備員の車内巡回も始めることで防犯体制を強化している。

防犯カメラは事件発生後の捜査だけでなく抑止としても役立つ。さらに、通信式のカメラは離れた場所で映像を確認し、状況次第では列車走行中に何らかの対応をとれる場合もある。電車ではないが、英ロンドンでは防犯カメラで見つけた不審な人物に遠隔で声かけを行い、犯罪抑止につなげている。事件以外に、体調不良となった乗客への対応にも利用できそうだ。

一方、コロナ禍で減少した鉄道利用者数は完全には戻らず、鉄道各社の業績回復はまだらもようであり、道半ばだ。災害対策を含め安全対策コストは増加傾向にあり、持続的な対策を行うには収益強化策も求められる。

日刊工業新聞 2023年07月07日

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