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万博へ準備加速、大阪メトロが投資する1000億円の使い道

万博へ準備加速、大阪メトロが投資する1000億円の使い道

万博会場に延伸予定の中央線に導入した新型車両「400系」の出発式(中央が河井社長)

大阪メトロは2025年大阪・関西万博に向けインフラや輸送力などを増強するため、25年度までに約1000億円を投入する。全路線の全駅に可動式ホーム柵を設置するほか、交通系ICカード・2次元コード・クレジットカード・顔認証のいずれにも対応した改札機を導入する。大阪市内と万博会場を直結する中央線は13編成増強することで最小運行間隔を2分30秒に短縮。万博来場者の約40%を混雑率120%で輸送する「快適でストレスのない移動を実現する」(河井英明社長)と強調する。(大阪・市川哲寛)

可動式ホーム柵は混雑するプラットホームでの安全確保が狙い。万博までに中央線全駅に設置し、25年度中に全路線の全駅に設ける。「インフラ整備は時間がかかるため優先し、まず中央線全駅に備える」(河井社長)方針。

改札機はアプリケーションからのチケット購入などを想定、世界水準機能に高める。駅での人工知能(AI)サイネージや多言語対応タブレット端末での情報提供などインバウンド(訪日外国人)対応も進める。これらインフラ整備などで約440億円を投資する。

インフラ整備などを上回る約550億円を投じるのが、新型車両導入などによる輸送力増強や自動運転技術開発だ。24日に出発式を行い、25日に中央線で運行を始めた400系を23編成、今後運行開始予定の「30000A系」を10編成導入し、万博までに中央線の全列車が新車両となる。特に大型ディスプレーや防犯カメラを備えた400系は「万博を強く意識して思いを込めた。万博のイメージ、新しい大阪の顔として期待する」(河井社長)と大きな役割を担う。

自動運転は電気自動車(EV)バスによるほぼ完全自動運転のレベル4を会場内で4台、大阪市内と会場を結ぶピストン輸送で6台実証実験し、30年度に社会実装する計画。「車両同士のコミュニケーションによる事故減、オンデマンドバスの24時間運転につなげる」(同)考え。

400系は大型ディスプレーや防犯カメラを備える

地下鉄車両では万博会場にできる夢洲新駅―大阪港駅間で、緊急停止操作などを行う係員付き自動運転を実証実験する。

大阪市城東区の検車場跡地では約10億円を投入して24年から万博の機運醸成で暫定利用する。顔認証によるゲートレス改札など未来の鉄道、移動とサービスと融合したリアル・バーチャルの体験、空飛ぶクルマの発着ポート設置を目指すモビリティーのハブ拠点などを設ける。万博開催中はサテライト会場としてにぎわい創出を図る。

万博は「地球規模の社会課題解決に対応、次世代の社会サービスを作るきっかけ」と捉える。このため「不退転の決意で万博に貢献する」(同)構えで、大阪の将来の交通のあり方を変革するために前進し、事業環境の発展につなげる考え。

日刊工業新聞 2023年月6月27日

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