コロナ5類移行で好転、生保9社の通期予想、4社が基礎利益増
生命保険各社の業績がコロナ禍の収束を背景に回復を見せている。大手9社の2024年3月期の基礎利益(本業のもうけ)は、新型コロナウイルス関連の保険金支払いが大幅に減少し、4社が増益を見込む。一方、米国金利の上昇で好調だった外貨建て保険の販売が一服し、24年3月期の保険料等収入(売上高相当)は9社中7社が減少する見通し。今後はコロナ禍前のように、国内外の金融環境の変化が業績の最大の変動要因となりそうだ。
24日、都内で会見した日本生命保険の佐藤和夫取締役は「(24年3月期は)新型コロナの5類移行に伴う経営環境の好転をしっかり捉えたい」と強調した。同社は24年3月期の基礎利益が豪子会社MLCを除き約6000億円と、前年同期比約27%増える見通しだ。
生保各社は22年9月にコロナ関連の入院給付金の支払い対象を重症化リスクのある患者に限定。5月のコロナの5類移行に伴い、給付負担がさらに減った。大手9社で23年3月期は5900億円以上のコロナ関連の支払いがあったが、この負担が減り、各社の24年3月期の基礎利益がかさ上げされる。
こうしたプラス材料があっても一部は基礎利益で減益や横ばいを見込む。欧米の金融引き締めで内外金利差が拡大し、「為替ヘッジコストが高止まりする」(明治安田生命の中村篤志専務執行役)ことが響く。
一方、売上高に相当する保険料等収入は、米連邦準備理事会(FRB)が早ければ年内にも利下げに転じるとの見方があり、外貨建て保険が23年3月期ほどは売れず減収を予想する会社が多い。外貨建て保険に関し、「保守的な計画を立てた」(第一生命ホールディングスの甲斐章文執行役員)や、「競合他社との競争激化による反動減を想定する」(住友生命の高尾延治執行役常務)といった指摘がある。
日本生命は、4月に団体年金保険で顧客に約束する予定利率(運用利回り)を1・25%から0・5%に引き下げたことが顧客流出を招き、減収を予想する。
同社は豪子会社を除いた数字で24年3月期の保険料等収入は前年同期比約6%減の約5兆8000億円となる見通しだ。
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