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算定が甘かった…上昇する太陽光発電の保険料、自然災害にケーブル盗難が追い打ち

算定が甘かった…上昇する太陽光発電の保険料、自然災害にケーブル盗難が追い打ち

太陽光発電の普及では保険サービスも役割を果たしてきた(イメージ)

太陽光発電向けの保険料が上昇している。水害や大雪といった自然災害による損壊のほか、電気ケーブルの盗難被害が多発し、高額な保険金の支払いが損害保険会社の経営を圧迫しているためだ。保険料の引き上げが再生可能エネルギー普及のブレーキにならないように、損保会社による事故対策が始まっている。

損保各社は2022年10月、火災や災害の損害を補償する企業保険料を一斉に値上げした。中でも太陽光発電の保険料は3割増と大幅な値上げとなった。損害保険ジャパンによると、20年を除くと太陽光発電の保険は収入を支払額が上回っている。つまり恒常的な赤字となっており、値上げをしないと保険サービスを維持できなくなっている。

要因は自然災害だ。同社によると太陽光発電所の事故件数の8割を占める。土砂崩れや洪水による浸水に加え、21年と22年は大雪で発電所がつぶれる事故も多発し、1件1億円以上の支払いが相次いだ。そこにケーブルの盗難が追い打ちをかけている。

同社企業財産グループの斎藤有希課長代理は「リスクの実態が顕在化してきた」と分析する。12年、再生可能エネルギーで発電した電気の固定価格買い取り制度(FIT)が始まると、損保各社は事故を補償する保険商品を売り出した。銀行も保険加入を条件に太陽光発電所の建設資金を融資するため、保険契約が順調に伸びた。

ただ当時、新しい市場であるため保険料の算定が甘かった。現在はリスクの実態が分かり、各社が値上げに踏み切った。他にも更新を1年単位にして保険料を改定しやすくしたり、支払限度額を設定したりして赤字回避に努めている。

太陽光発電設備の損害額

一方で、こうした値上げが太陽光発電事業者の投資意欲をそぐ恐れがある。そこで損保ジャパンは対策として被災発電所にリユース(再利用)や資源リサイクルを提案している。使用可能な太陽光発電パネルがあれば中古品として販売する。使用不可能な破損パネルからはアルミニウムなどの資源を回収し、売却益で保険金の支払額を圧縮する。発電事業者にとっても再建後の保険料の上昇を抑えられる。これまでに支払額を1億円以上抑えた事例がある。

同社は強風や雪の重みに対する強度を確認する構造設計評価サービスも始めた。強度不十分だと有料で改善策を提案する。「設計が脆弱(ぜいじゃく)でありながら問題に気付いていない事業者も少なくない」(斎藤課長代理)という。設計の改善で事故が減ると、業界全体として保険料の上昇を抑制できる。

同社企業財産グループの伊藤瞬課長代理は「保険料が上昇しても太陽光発電市場が縮小せず、投資対象として魅力的であり続けるように努力する」と語る。太陽光発電の普及に保険も役割を果たしてきた。今後の風力発電の導入拡大にも保険が欠かせない。事故リスクを見極めながら再生エネ普及に貢献する保険サービスが望まれる。

日刊工業新聞 2023年05月18日

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