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FDKが23年度内にも量産、「全固体電池」の特徴

FDKが23年度内にも量産、「全固体電池」の特徴

FDKは2023年度内にも全固体電池を量産する(同社提供)

FDKは2023年度内にも全固体電池を湖西工場(静岡県湖西市)で量産する。まずは工場設備向け製品の生産を始め、IoT(モノのインターネット)機器やウエアラブル機器、車載電装品向けなど幅広く提案する。フル生産した場合の月産能力は30万個を見込む。将来的には「容量を増やした(全固体電池の)次世代バージョンの製造も考えている」(長野良社長)。ニッケル亜鉛電池なども含めた次世代電池事業の育成を急ぐ。

FDKの全固体電池には酸化物系の固体電解質が用いられている。小型かつ表面実装部品(SMD)に対応し、安全性も高い点が特徴。顧客の要望への対応が必要になったことや、「想定していなかった技術的な問題が出てきた」(長野社長)ことで量産が遅れていた。このほど技術課題の解決にめどがつき、顧客との調整も進んでいることから、23年度の出荷を見込む。

同社は23―25年度にかけて全固体電池を含めた次世代電池に約15億円を投資する計画。新たな全固体電池の製造に当たっては、数年後にも別途、投資が必要になる見通しだ。次世代電池には全固体電池のほか、ニッケル亜鉛電池や水素/空気二次電池を含む。中でも「ニッケル亜鉛電池は量産試作として、多くのサンプル品を製造している」(同)。

既存事業ではリチウム電池で23年度に十数億円の投資を計画。内製化や製造効率向上を目指す。

インタビュー・産業分野で需要回復 電池・電子事業強み生かす

社長・長野良氏

長野社長に今後の戦略などを聞いた。(阿部未沙子)

―25年度を最終年度とする中期事業計画を発表しました。
「(中計期間の)3年間で色合いが違うと考えており、徐々に良くなるとみている。23年度は、材料費や電気代といったコスト上昇の影響で非常に苦しい。だが、市場で材料費が下がり気味になっている上に(電池の)需要の盛り返しも見込まれるため、下期にかけて上向くだろう。特に自動車など産業分野での需要が復調するのではないか」

―デジタル変革(DX)推進にも注力します。
「22年の初めごろからDXを進めるための準備を開始し、DXとは何かを自問自答しながら、他社をベンチマークとするなどして自社がやるべきことを整理してきた。DXとは付加価値を高めることに対してデジタル技術を使う発想だと考える。工場や間接部門などの現場で、こうした発想を持つ人を育てたい。全社員のうち3割ほどがDXのマインドを持つことができれば、文化として定着するだろう」

―親会社の富士通がFDKを含むノンコア事業を売却する方針を示しています。
「売却は既定路線だと認識している。他方で当社の強みは、電池事業と、モジュールやスイッチング電源などを扱う電子事業を両方持っている点だ。当社にとって、このような強みを生かせない形で売却の話が進むことは望まない」


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日刊工業新聞 2023年05月17日

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