#20
容量1.8倍…全固体電池向けに厚さ1mmの厚膜電極を開発
東工大、産業化へ一歩
東京工業大学の堀智特任准教授と菅野了次特命教授らは、厚さ1ミリメートルの全固体電池用厚膜正極を開発した。電極容量は1平方センチメートル当たり25ミリアンペア時以上と従来の1・8倍に増えた。電極の作成はシンプルな乾式プロセスを使える。コストや安全性に優れる。全固体電池の産業化に向けた一歩になる。
固体電解質としてリチウム・ゲルマニウム・リン硫化物の一部元素をケイ素や臭素、酸素に置換したイオン伝導体を開発した。イオン伝導率は1センチメートル当たり32ミリジーメンスと、置換前の2・3―3・8倍の伝導率を示した。
結晶構造を中性子回折で調べると、陰イオンの位置に酸素と臭素と硫黄が等しい割合で存在していた。不規則性が高く、リチウムイオンが通過する際のエネルギー障壁が半分になる。リチウムイオンが出入りしやすく、電極の厚みを1ミリメートルと厚くしても理論値の9割の容量を取り出せた。
リチウム金属電極と組み合わせ電池セルを作製すると、60度Cでの電流密度は1平方センチメートル当たり10ミリアンペア、容量は同20ミリアンペア時だった。面積当たりの容量はトップクラスになる。成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された。
【関連記事】「全固体電池」中小企業へのビジネスチャンス
日刊工業新聞 2023年07月08日
特集・連載情報
次世代電池の大本命である全固体電池の研究や企業の開発動向をまとめました。