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政府の大型支援獲得に名乗り上げた意外な大学とは?

文部科学省は4日、国際卓越研究大学の申請10件を発表した。国立大学は指定国立大10大学のうち一橋大を除く9大学からの8件(統合予定の東京医科歯科大学と東京工業大学は共同申請)。私立大学は早稲田大学に加え東京理科大学が応募した。政府の10兆円ファンドによる、これまでにない大型支援獲得に向けた激烈な競争が始まった。

国際卓越研究大学制度による公募1期目の締め切りは3月末。2022年秋には相当数の大学が申請を検討していたが、補正予算で「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」が決定。応募をどちらか一方に決める必要があり、方向転換した大学が多い。結果的には国際卓越研究大学への申請は、理系学部を持つ指定国立大学が中心となった。

東京医科歯科大と東工大は「自己を変革し続け、社会とともに活力ある未来を切り開くのに、大学統合の効果を最大限に発揮する」として連名で申請した。慶応義塾大学は、学内議論の状況を重視して見送った。公立大学の応募はなかった。

審査は文科省に設置したアドバイザリーボードが書類、ヒアリング、現地視察で行う。23年秋に対象大学を数校、候補に選定(大学の認定と計画の認可)する。法改正などを経て正式決定し、助成は24年度以降に始まる。

2期目の公募は2年後以降になる。1期目で不採択だった大学や、今回は重複申請ができなかった地域中核事業で採択された大学も申請できる。

国際卓越研究大学は世界トップクラスの研究力と、それによる社会変革の人材育成や産学協創の好循環を目指すもの。各大学には年3%の事業成長、独自基金の創成、数十年間の改革を維持するガバナンス体制などが求められており、変革の方策と潜在力が重視される。

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日刊工業新聞 2023年04月05日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
申請大学名でインパクトがあったのは私大だ。慶応が申請を見送り、東京理科大学が挑戦した。私は以前から「慶大はそもそも、他大学と異なって『政府がこういうから、する』という態度をかなり嫌う」と感じていた。また伊藤塾長は、取材や国際卓越の議論(科学技術・学術審議会の委員会で、委員として一緒だった)時に、制度への疑問を口にすることが多く、「慶大は申請しないのではないか」と推測していた。一方、「早慶に次ぐ3位」の立ち位置は、何を指標にしてみるかによって異なるが立命館大、上智大、東京理科大、それに芝浦工大あたりの名前を耳にする。とはいえ早慶と同格とはいかない中で、東京理科大がチャレンジだ。 これは現場の学内教職員や学生に対して相当、刺激し変革する効果があるのではないか。公立大は「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」に応募するのが普通だし、申請ハードルの論文指標などが難しかったはずだ。国立大は、10の指定国立大のうち文系の一橋大を除いて応募、と意外性はない。早くから積極的だった東京農工大が見送り、特色大学(大規模大学とは異なるハードルが用意されていた)の申請がなかった点が残念だ。ちなみに文科省の大学研究力強化室は「応募数はもっと少ないとみていた」とのこと。秋の選定発表が非常に楽しみだ。

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