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国研経営が大変化。理研・物材機構・産総研に求められる組織改革

国研経営が大変化。理研・物材機構・産総研に求められる組織改革

産総研は社会実装の外部法人の設立準備を進める(つくば本部棟)

2022年は特定国立研究開発法人3機関の経営に大きな変化があった。理化学研究所物質・材料研究機構は、新理事長を迎えた。産業技術総合研究所は、社会実装の外部法人の設立準備を進める。23年は10兆円の大学ファンドを受けた国際卓越研究大学の選定と人材採用が本格化する。国研は採用難を見据えて施策を打つ必要がある。

「社会実装までやらなければ産総研の使命を果たせない。最後まで伴走する部隊を設ける」と産総研の石村和彦理事長は社会実装本部を立ち上げた。23年度に外部法人を設立して人と機能を移管する。民間と競える待遇で優秀な人材を集める。

現在、技術の市場調査やスタートアップ関連などの人員採用を進めている。産総研をイノベーションのための技術を研究する組織からイノベーションを起こす組織へと変える。

理研は五神真理事長が就任してすぐに量子コンピューター研究をテコ入れした。スパコン「富岳」など、現行の計算機科学と量子計算を組み合わせた量子古典ハイブリッドコンピューティングの研究を拡大させる。コンピューターの進歩が生命科学や物質科学などの研究を加速させる好循環を起こす。

物材機構の宝野和博理事長は23年度からの次期中長期計画に向けて前倒しで組織改革を進める。これまで国の戦略を受けて進める研究プロジェクトと研究組織が一致していなかった。そこで研究拠点とプロジェクトを対応させ、研究テーマを作るグループリーダーに求心力を持たせた。

宝野理事長は「ミッションの決まった研究だけでは優秀な人材は集まらない」と説明する。そこでエフォート(時間配分)の半分は自由な発想で研究を進められる予算支援制度を設けた。

3機関とも人材獲得に動く。ただ国際卓越研究大学で特任研究員のポストが大量に生まれると見込まれる。まずは人材の取り合いになり、その後は任期を終えた研究員の受け皿が必要になる。宝野理事長は「国研の機能強化を戦略的に進める必要がある」と指摘する。

日刊工業新聞 2022年12月9日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
大学ファンドで人材の流れが変わると予想されています。国際卓越研究大学に選ばれた大学では、特任研究員のポストが急増し、周辺の大学はまず採用難になり、数年後には研究者の受け入れ先としての役割を期待されます。大学院生も周辺の大学から卓越大に吸い上げることになると考えられます。学部生の定員を増やさずに事業規模25年で2倍を達成するには大学院生を外から採ってこないといけません。地域の大学はさることながら、その大学と連携して大学院生を獲得してきた国研も対策を練らないといけません。卓越大の特任研究員が次のポストを探すときに、卓越大以外は魅力を失っていては困ってしまいます。卓越大は国内で人材を吸い上げるだけでなく、海外から集めて国内に送り出すことをやらないといけないのだと思います。

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