障がい者支援で雇用創出、営業代行手がける企業が顧客から得た評価
ニューノーマル(新常態)時代に進化したサービスが、障がい者の新たな雇用を創出している。企業の営業代行を手がけるアイランド・ブレイン(名古屋市中区、鈴木徹社長)は、2020年6月から企業各社がウェブサイトに設ける問い合わせフォームに依頼企業の営業メッセージを送信するサービスを開始し、その業務を障がい者が担う仕組みを整えた。この障がい者支援の取り組みは同社内の意識も変化させ、1月に国連の持続可能な開発目標(SDGs)宣言を策定するに至った。
以前の同社は電話によるアポイントを営業代行業務の中心に据えていた。だが、「コロナ禍で在宅勤務が浸透し、会社に電話をかけても担当者に接触できなくなった」(鈴木社長)。代わりに始めた問い合わせフォームを活用した事業は着実に伸びた一方、メッセージ送信の作業者確保という課題も生じた。そこで始めたのが、障がい者に就労訓練をする就労継続支援B型事業所への業務委託だ。
委託先のB型事業所運営会社の岩橋知裕社長はアイランド・ブレインのOBで、福祉事業の別会社の経営者でもある。20年8月に両者の連携が始まり、間もなく業務遂行に問題がないことを確認。作業を効率化するシステムを自社で構築するなど改善も重ねた。
現在では全国約100事業所に委託し、毎月100万通以上のメッセージを送信するまでに成長。業容拡大に対応するため、21年にアイランド・ブレインと岩橋社長が共同で、この事業を専門にするB型運営会社「Best Team」(同市中区)を設立した。
この運営会社の社長も務める岩橋社長は同事業について「工賃の単価が高いことがメリット」と語る。一般的なB型作業の文具や箱の組み立ての工賃は一つ1円程度だが、メッセージ送信は5円程度になる。また、「パソコン作業は人気も高く、作業者の士気も上がる」(岩橋社長)。
経済の根底を支える“商談”が障がい者支援の取り組みをきっかけにするこの仕組みに対し、依頼企業も高く評価しているという。