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「紙カップゴミ」年6万個削減、武田薬品がリユースカップを職場に導入した理由

「紙カップゴミ」年6万個削減、武田薬品がリユースカップを職場に導入した理由

Takedaのロゴが入ったリユースカップを導入

職場で社員に飲み物を提供する企業において、繰り返し使えるプラスチック製リユースカップへの関心が高まっている。2022年11月にリユースカップを導入した武田薬品工業は、社員が喫茶に使っていた年6万個の紙カップを減らせる見込みだ。紙カップの廃棄物削減効果が大きく、リユースカップを推奨する団体にも問い合わせが増えている。

武田薬品はグローバル本社(東京都中央区)でリユースカップの活用を始めた。職場でコーヒーなどを提供している飲料サーバーの脇に配備していた紙カップをリユースカップに変更した。社員はリユースカップにコーヒーなどを入れ、飲み終わると飲料サーバー近くの回収箱に置く。同じビルで営業するカフェテリア業者が使用済みカップを回収して洗浄し、飲料サーバーの脇に戻す。

社員にとっては紙カップがリユースカップに代わっただけで、利用に大きな変更はない。グローバル本社には1000人強の社員が所属している。在宅勤務を除いて計算すると、年6万個の紙カップの廃棄を削減できる。

武田薬品東京ハブサイトファシリティオペレーションズの中村守公子課長代理は「紙カップの廃棄削減が課題だった」と語る。紙カップは何回か使用しても必ずゴミになる。自分専用容器(マイボトル・カップ)を薦めるが、紙カップを廃止できなかった。

また同社は2019年度、事業活動で発生する温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを達成した。現在は再生可能エネルギー電気も購入して環境負荷を低減しており、「社内でもできる事から始めたいと思っていた」(中村代理)という。喫茶は社員に身近であり、一人ひとりが廃棄物削減に参加できることからリユースカップを採用した。

紙カップよりもコストアップになるが、「環境対策は優先してやるべきこと」(同)と言い切る。社員も「紙カップを捨てる罪悪感がなくなった」と歓迎する。

一般財団法人の地球・人間環境フォーラム(東京都台東区)がリユースカップを推奨しており、武田薬品のほか、アクセンチュア(東京都港区)やフォスター電機など計6社の導入を支援した。

資源問題への関心の高まりから、他社からの問い合わせが増えている。同フォーラムの中畝幸雄研究員は「私たちが提案して初めて紙カップを大量消費していると気づく企業も少なくない」と反応を語る。プラスチックの使用を減らす風潮があるが、リユースカップは使い続けると紙カップよりも環境負荷を抑えられる。リユースカップも劣化して寿命が来るが、砕いて再成形すればプラスチック製品に再生できる。

また、同フォーラムの天野路子研究主任は「オフィスのあり方を検討する中でリユースカップの利用を考える企業が増えている」と語る。席を自由に選ぶフリーアドレスを採用すると、私物の置き場が減ってマイカップを持参しづらくなる。

同フォーラムはリユースカップの洗浄に社会福祉法人を紹介している。リユースカップ導入企業は環境貢献だけでなく、障がい者の就労も支援できる。武田のように近隣の飲食店に依頼すれば、店舗は空いている時間に食器洗浄機を有効活用できる。

飲料サーバの横にリユースカップを配備(武田薬品)

東京都は2024年度までに、都主催イベントで使い捨てプラスチック容器の使用を禁止する。リユースカップの使用機会が増えるため、注目が高まる。紙カップの削減効果が大きく、導入企業も増えそうだ。

日刊工業新聞 2023年01月13日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
ついつい紙カップを使ってしまいます。天然資源からできているし、木材は再生可能だからと油断しがちです。1人だと少量でも、社員全員だと数万個と、非常に大量な廃棄です。武田のリユースカップはスマートなデザイン、以前に紹介したアクセンチュアのリユースカップは個性的でした。オジルナルカップは社員の愛着がわきそうです。

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