配送ロボットの「職」どこに?…街に溶け込むまでのハードル
配送ロボットの「職探し」が進んでいる。道路交通法改正などでロボットが公道を走る環境が整う点が背景にある。モノを運ぶ配送ロボはヒトを運ぶ自動運転車よりも技術的ハードルが低く、規制さえ取り払われれば、すぐに実用化されると考えられがちだ。現実には、サービスと機能とコストの妥協点を探りつつビジネスモデルの開発が長く続く。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトではラストワンマイル物流を革新すべく、4社が技術とサービスモデルを開発している。その先端と課題を追った。
「楽観はしていない。本当にものになるかまだ分からない状況」。NEDOロボット・AI部の千田和也主幹は気を引き締める。工場や倉庫などで使われる無人搬送車(AGV)においては1台数十万円の製品が市場に出始めている。プロが使うロボはユーザーが環境を整え、機能を削ぎ落とし、業務プロセスを変えて費用対効果を高める。不具合からのリカバリーも任せられる。
NEDOプロでは一般消費者向けのラストワンマイル物流を対象としている。ニーズは多様で、ユーザーと一緒に機能を削ぎ落とす改善サイクルが回らない。
例えば「荷物を届けても客が取りに来ない場合にスマートフォンにアラートを出す」「マンションの高層階まで届けられるようエレベーターと連携する」など、あれば便利な機能は無数にある。ただ実現には開発のコストがかさみ、サービス料金を押し上げてしまう。1台数百万円の機械で一つ数百円の荷物を運び、人手作業と差別化するのは難しい。
サービスと機能とコストの最適解はどこなのか。NEDOプロで知見を交換しながら開発することで、企業単独で開発するよりも成功率を上げることができる。NEDOの鶴田壮広プロジェクトマネージャー(PM)は「宅配だけでなく、フードデリバリーや移動販売所などさまざまなモデルが試されている」と説明する。
さらに、鶴田PMは「開発チームに実証エリアを提供する自治体同士でもノウハウが蓄積する」と指摘する。地域への周知や許可に加え、ロボット実証を機に公道をきれいに整える地域もある。住民も配送ロボも走りやすい路面になり、ロボと共にきれいな街並みがメディアで紹介される副次効果もある。
開発プロジェクトは25年3月末まで。「1人10台の遠隔監視」「月間400キロメートルの走行」などの技術開発目標を達成した上でのサービス開発を目指す。配送ロボは社会に溶け込めるか、挑戦が続く。