値札にない価値提供、ローソンが推進する“未来のコンビニ”づくりの中身
ローソンを舞台に脱炭素や循環型社会などの新しい価値観のコンビニを、お客と一緒に作る取り組みが進んでいる。カギとなるのがロボットやアバター(分身)などのテクノロジーだ。レジ打ちなどの従来業務を省人化し、代わりにおもてなしクルーを配置して来店客との対話を増やす。レジ袋がなくなり、少し不便になった分を社会的価値として持って帰ってもらう。値札に載らない価値をお店とお客が共有する仕組みになる。(小寺貴之)
「一つひとつは小さな二酸化炭素(CO2)削減の効果をアバターで伝えていきたい」とローソンの竹増貞信社長は力を込める。新型店舗「グリーンローソン」では使い捨てのレジ袋やスプーンなどのカトラリーを撤廃する。常温弁当は冷凍弁当に切り替えフードロスを削減する。冷蔵ショーケースは扉付きのものを採用し、冷気漏れを防いで省エネにつなげる。こうしたサステナブルな施策を23個導入した。省人化と並行しておもてなしクルーを配置しコミュニケーションを増やした。
来店客には扉を開けて商品を手に取るという一手間やレジ袋がないなどのちょっとした負担を求めることになる。この負担の社会的価値が地域に浸透し、お客の行動変容につながるまでは、冷蔵品の売り上げ減など、お店のリスクになる。
アバターにはこの過渡期を短縮し付加価値とする役割が期待される。お店のコンセプトやCO2削減の結果をお客に伝えて一緒に取り組む仲間になってもらう。竹増社長は「お客さまと一緒に新しいコンビニを創りたい。こうしたコミュニケーションには生身の人間が操作するアバターが向く」と説明する。
同アバターは大阪大学発ベンチャーのAVITA(東京都品川区)が開発する。もともとアバターは高齢者や障がい者などハンディある人がコンビニで働く機会を広げるために導入された。専門的なトレーニングを受けて複数店舗を掛け持ちするなど、全員参加型社会を目指したものだ。
これが脱炭素の仲間作りにつながった。AVITAの西口昇吾取締役は「脱炭素の理論はわかっても実感できない人は少なくない。普段から接するアバターに応援してもらえると、家に帰ってからも小さな気付きがある」と指摘する。
商品がロボットのように動いて自己PRする自薦ロボも導入された。卓上ヒト型の他薦ロボと組み合わせ、商品とロボの掛け合いを通して販促する。同システムを開発するサイバーエージェントの岩本拓也研究員は「ロボット化すると消費期限の近い『棚の手前の子から連れて帰ってあげて』とお願いできる。フードロス削減につながる可能性がある」と説明する。同社と阪大の共同研究として自薦他薦によるお客の行動変容を検証する。
これまでロボットの費用対効果を計る実証実験は多々あったが、環境価値の社会受容性向上や店舗実証を支えた例は少ない。ローソンの竹増社長は「新しいコミュニケーションの型を作りたい。この型を全国に展開したい」と力を込める。