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DS教育で国際展開、東工大ならではと言える理由

DS教育で国際展開、東工大ならではと言える理由

「データサイエンス・AI全学教育機構」の看板を掛ける益一哉東工大学長(左)ら(東工大提供)

東京工業大学は、学士から大学院博士まで全課程で整備する理工系データサイエンス(DS)・人工知能(AI)教育の国際展開を始めた。タイ大学連合のTAIST(タイスト)へ英語での授業を配信する。3月開催のシンポジウムでは、一括で1000人規模の初年次教育を行う米カリフォルニア大学バークレー校の担当者が講演。連携企業約40社が参加する東工大コンソーシアムの報告と合わせ、世界に通用するDS・AI指導者育成を議論する。

東工大は2022年12月に「データサイエンス・AI全学教育機構」を設置。リテラシー、応用基礎、エキスパートの各レベルに合わせた学士、大学院修士、同博士の各課程の全学教育について全国で唯一、整備のめどをつけた。

東工大は以前からTAISTと関係が強く、教員が講義や修士論文審査で関わってきた。22年度の授業ではDS授業の依頼を受け、修士1年生向け科目「基盤人工知能」を配信した。東工大は原則、全大学院講義を英語で行うため手間も少なく、現地の約20人が東工大生とともにリアルタイムで視聴した。

3月に2カ国語・ハイブリッド方式で開くシンポジウムは、米国でも先進的で国内外にノウハウを提供するカリフォルニア大バークレー校の講演が目玉の一つ。同大は全学規模のDS教育を14年頃から展開。1000人規模の初年次教育を一括で実施している。

東工大は今後、情報交換やイベントの共同配信などで海外大学との関係を強化する。また連携企業とはDS教育に終わらず、インターンシップ(就業体験)参加学生を通じた、所属研究室との産学共同研究の方策なども検討していく。

東工大「データサイエンス・AI教育体系」を整備。理工系の教育モデルに

日刊工業新聞 2023年02月16日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
DSは重要性の認識が急速に進んだ結果、各大学での差別化が難しくなっている。その中で、国際展開を打ち出せるのは東工大ならでは、だろう。以前から同大の大学院の授業は、非常勤講師によるものを除き、英語で行われている。私は「日常英会話を日本人同士でしても、ネイティブの発音は聞き取れないままで、残念ながら効果はいまひとつ。対して日本人教員でも英語による専門分野の授業なら、留学生を含む研究室での研究活動と相まって、それなりに効果があるのでは」と思っていた。さらに今回、「海外大学への配信なら、英語の授業そのままでOK」という別のメリットを知ることになった。英語圏の大学でなくとも、注目度の高い著名教員のWeb配信授業で世界展開を、という野望に向けた一例かと想像した。

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