M&A推進で世界トップ10入り、武田薬品のグループ経営戦略
武田薬品工業は世界を一つの市場と捉え、グローバル化を推進してきた。2008年の米バイオ医薬品企業ミレニアム・ファーマシューティカルズ買収を皮切りに、11年にはスイスのナイコメッドの買収で販売エリアを70カ国に拡大。14年にクリストフ・ウェバー氏が外国人として武田薬品工業初の社長に就き、19年には約6兆円もの巨額を投じて製薬大手シャイアーを買収。今では売上高で世界の製薬業界トップ10に入る。
積極的なM&A(合併・買収)で企業規模を拡大し、新薬創出に向けた研究開発体制を充実させるなど、世界で戦えるグループにまで成長した。経営にかかわる組織として、社長のほか各部門の責任者計19人で構成される「タケダ・エグゼクティブ・チーム」(TET)を設置。外国人は14人で、専門性や国籍、性別など多様なバックグラウンドを持つメンバーが、さまざまなステークホルダーの視点に立って経営戦略、業務上の重要事項を議論する。
TETのメンバーは、決裁権限を持つ三つの会議体に所属。この会議体で決済された案件が取締役会に報告され、取締役会がTETメンバーらによる業務執行を監督する。三つの会議体の決裁権以外の案件は、TETに権限を委譲している。
製薬企業の要ともなる研究開発拠点は米ボストン、サンディエゴ、日本に置く。「グローバルスケールの研究者ネットワーク、重点領域での高い専門性、世界最高水準のリソースを備える必要があるため」(武田薬品工業)だ。
現在、売上高の海外比率は8割を超え、80カ国・地域に約4万7000人いる従業員のうち9割は外国人だ。急速に社としてのグローバル化が進み、国籍も考え方も様々な人が働くが「誠実、公正を標榜するタケダイズムの価値観や患者に寄り添う、事業を発展させるという行動指針に変わりはない」(同)という。企業のあり方は変化しても、日本という強固なルーツを守りながら企業理念にある価値観を全従業員が共有する姿勢は維持している。