「麦わらストロー」量産。アサヒGHDが手応えを得たふぞろいな“異業種連携”
アサヒグループホールディングス(GHD)や農業生産者、福祉作業所などが連携して麦の茎で作った「麦わらストロー」の販売が始まった。出荷予定は1000万本。本格的な量産になったことでプラスチック製ストローの削減だけでなく、農業や社会にも貢献する取り組みとなった。アサヒGHD事業企画部コーポレートチームの染谷真央氏は「新しい価値を生んでいる」と、“ふぞろい”な異業種連携の手応えを語る。
環境・農業・福祉で新価値
アサヒGHDらが参加するストロー作りは、広域連携事業推進機構(東京都中央区)が主導する「ふぞろいのストロープロジェクト」。5月に始動し、完成したストローが8月24日、クラウドファンディングで売り出された。3000円(10本入り2セットなど)から購入でき、9月1日時点で目標額の100万円を突破した。
アサヒGHDは2020年、宮城県東松島市で栽培を支援した大麦でストローを製作した経験がある。ビール原料として収穫した麦の有効利用になるが、染谷氏は「小規模だと事業化が難しい。生産者の利益につなげたい」と課題を感じた。そんな時、広域連携事業推進機構からプロジェクトに誘われた。
アサヒビールは植物繊維を主成分としたリユースカップを商品化していた。そのカップ開発に携わった同社パッケージング技術研究所の古原徹氏は「環境配慮商品を作るだけでなく、消費者の行動をエコに変える商品にしたい」という思いを持っており、プロジェクトにも参画した。
他にも福井県や滋賀県、長野県など各地の生産者も加わった。米や麦、野菜を生産するフェルマ木須(佐賀県伊万里市)の木須栄作社長は「大雨や水不足が起きており、日々の農業で環境変化を感じる。食料の安定供給を守りたい」と語る。麦わらストローを手に取った消費者が気候変動問題に興味を持ち、行動を変えるきっかけになると期待する。
加工は各地の福祉作業所で働く障がい者が主に担う。オンラインで各地と結び、ストロー作りのノウハウを共有しながら長さや衛生管理の基準も合わせた。それでも各地で麦の品種が違い、同一のストローはできない。そこで「ふぞろいのストロー」と名付けた。
古原氏は「参加者も多様。みんなの思い、目的も異なり、まさに“ふぞろい”」と解説する。企業からはレンゴーも参加するなど、“ふぞろい”な異業種連携だから環境問題にとどまらず、生産者や障がい者雇用にも貢献する。染谷氏は「自然の恵みを守って新しい価値を生んでいる。地域にも貢献できる」と話す。プロジェクトは参加者を募っており、木須社長も「広げられる仕組みであり、他の農家も取り組める」と価値の拡大に期待する。
また、プロジェクトは企業にとって商品企画の教材にもなりそうだ。古原氏は「麦わらストローにはストーリーがあり、消費者にモノの価値を伝えられる。これからのメーカーはどんな素材で、だれが作ったのか、ストリーで価値を伝えないと消費者に選んでもらえない」と言葉をかみしめる。