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「瓶」は生産全廃の企業も…牛乳で “主役”の紙パック、酒類にも広がる

液体用紙パックは今 #2

「上流のリソースを持たないと、今後立ちゆかなくなるのではとの危機感があった」と語るのは、石塚王子ペーパーパッケージング(IOP、兵庫県福崎町)の田村亮一社長。牛乳用などの紙パックを単独で手がけてきた石塚硝子出身者として、王子ホールディングス(HD)との協業模索を振り返る。それまで両社の取引は、ほぼないに等しかったという。

IOPは2020年に両社の共同出資で誕生。印刷・情報用紙などの需要が先細りする王子HDは、紙素材を使う新事業への進出を果たす。

石塚硝子は祖業のガラス瓶事業がまさに22年12月末、転換点を迎える。2拠点のうち、兵庫県姫路市で瓶の生産を取りやめ、同社で牛乳瓶の生産を全廃するからだ。

内容物が一層おいしく感じられ、リユースできるからと瓶の愛好者は少なくないが、重く、割れやすいという扱い上の難点がある。学校向け牛乳は半世紀前は瓶が全盛だったが、80年代後半に紙パックと拮抗(きっこう)し、今や約1割。“主役”に躍り出た紙パックは清涼飲料や、日本酒や焼酎など酒類にも広がりをみせている。

国内で紙パックは日本製紙、北越コーポレーション傘下の北越パッケージ(東京都中央区)など素材関連、そして凸版印刷大日本印刷などパッケージ関連が生産する。パッケージ各社や石塚硝子は、ペットボトル素材など各種プラスチック容器も手がけている。

紙パック一つとっても多種多様だ。牛乳が代表格のチルド(冷蔵)商品は10日間、21日間など、豆乳やコーヒーなどアセプティック(常温)商品は6カ月間、9カ月間などと“持ち”が異なる。酒や調味料、酸性飲料などは、ホット充填向け容器を用いている。

充填方式を問わず口栓付きやそうでないタイプもある。容器自体の設計や防水、保存のためのコーティング剤など副資材を最適化し、それぞれ内容物の鮮度を維持している。

メーカーは業容の拡大を進めるが、提携戦略もコロナ禍で“雌伏”のときを余儀なくされ、真価の発揮はこれからだ。大日本印刷は18年、スイスの紙容器メーカー、SIGコンビブロックと国内に共同出資会社を設立。北越パッケージは17年に、アセプ充填機を扱う伊IPIと国内独占販売契約を締結した。

北越パッケージは飲料向けではチルド専業とみられ「(特定の)充填機に縛られず、顧客の選択肢を広げるのが当社のビジネスモデル」(川島嘉則社長)としてきた。23年度にはアセプの顧客第1号の獲得を目指す。

日刊工業新聞 2022年12月16日

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液体用紙パックは今
液体用紙パックは今
液体用の紙製パックが日本に登場して60年がたちました。外資系に次いで、国内の製紙、印刷・包装会社が参入し、今や液体容器の定番になっています。日本らしい工夫が重ねられ、生活様式をも変えてきた液体用紙パックの最前線を見た。

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