ドローンの標準性能、バケツ活用テストの有効性
バケツで簡単テスト
長岡技術科学大学や東京大学の研究者が米国標準研究所(NIST)と連携して飛行ロボット(ドローン)の標準性能評価(STM)の普及を進めている。ドローンでバケツの中を順に覗いて調査能力を測る。バケツを使うと、どこでも試験環境を用意でき、標準化された評価ができる。米国ではバスの底に仕掛けられた爆弾や座席の隙間に潜む犯人がいないか調査する課題に利用される。日本でもドローンスクールでの活用が検討されている。(小寺貴之)
災害・テロ対策訓練に有効
「消防や対テロの現場は状況が毎回変わる。ドローンを素早く正確に操縦する必要がある」とNIST・米メリーランド大学のトム・ハウス研究員は説明する。この操縦スキルや調査能力の評価にバケツを使ったSTMが利用されている。
試験法は単純だ。ドローンでバケツの底のCマークを順に撮影してそのタイムを計る。ドローンがバケツの中を覗き込むと、バケツの口が開いた直線上に機体が存在することになる。1点に留まり二つのバケツを撮影すると直線と直線の交点に存在することになる。
この交点を飛行経路の中継点として順番に回る。飛行の巧みさと撮影の精度や効率を同時に評価できる。映像作品の空撮では滑らかに視点を移動させながら対象を撮影することが求められるが、消防や災害対応では確認すべきポイントが決まっている。多数の調査項目を限られた時間内に押さえていく技能を評価する。
米国ではダラス空港での爆発物処理で、地上走行ロボが車両内部の調査に手間取り、小型ドローンの活用が進んだ。車の窓ガラスを割って進入するドローンも開発されている。東大の五十嵐広希特任研究員は「日本では消防やインフラ点検などのニーズが大きい」と説明する。橋梁やトンネルなどの構造物のクラックや水漏れを確認する用途開発が進む。
バケツを使ったSTMはシナリオ訓練に組み込みやすい。爆発物処理なら車両の中、橋梁点検なら橋脚などにバケツを設置すれば、現場がそのまま訓練に使える。ドローン用の訓練シミュレーターを開発する理経の石川大樹部長は「バーチャル訓練では火災や海難事故を再現できる。バケツを並べると災害シナリオで状況判断、STMで技能を評価できる」と説明する。
ドローン操縦士協会(DPA、東京都渋谷区)は認定したドローンスクールへの展開を検討する。下里浩文エグゼクティブプロデューサーは「低コストで展開でき、標準化されている点が優れる」と期待する。長岡技科大の木村哲也教授は「ワークショップを開くと消防関係の出席者が多い」という。消防は日々訓練を重ねる職種だ。その訓練を標準化し、横展開するため検討されている。
このSTMは進化中だ。NISTのトム・ハウス研究員は「国際連携でさまざまなアイデアを集めたい」という。災害やテロに対しては常に対応力を磨き続ける必要がある。業界を超えた知恵の交換も必要だ。STMはその礎になる。