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時速150kmの「ティルト・ウイング型ドローン」実用化へ、垂直離着陸とプロペラ機融合

SLTが26年発売目指す
時速150kmの「ティルト・ウイング型ドローン」実用化へ、垂直離着陸とプロペラ機融合

空飛ぶクルマの検証用に開発中の小型機を、先行して産業用ドローンとして発売する

スカイリンクテクノロジーズ(SLT、神戸市西区、森本高広社長)は、主翼の傾きを制御して効率的に飛行できるティルト・ウイング型の産業用飛行ロボット(ドローン)を市場投入する。まず2025年にサンプル出荷し、26年発売を目指す。垂直離着陸機(VTOL)の垂直移動と、プロペラ機の水平飛行の両方の特徴を持つ。時速150キロメートルで航続時間は2時間。垂直離着陸できる産業用ドローンでは業界最高クラスの性能という。30年に同構造の「空飛ぶクルマ」の市場投入も目指す。

主翼のプロペラを上に向け垂直離着陸し、ホバリング(停止)状態から主翼を傾け、プロペラ機のように変形する。上向きのプロペラは、水平飛行時は横向きに変わるため、機体の不要な重量を減らせる。またプロペラを3発式とすることで、ヘリコプターのような複雑な制御が不要となり、機体構造をシンプルにできる。長時間飛行のため、電動式ではなくエンジン式を採用する。

空飛ぶクルマの検証用小型機をベースとして産業用ドローンを製品化。兵庫県内の中小製造業で構成する「神戸エアロネットワーク」が部品の製作で協力。25年の大阪・関西万博では、2人乗りの空飛ぶクルマ出展も計画する。

30年に投入予定の空飛ぶクルマは時速650キロメートル、航続時間2時間半の性能を目指す。スカイドライブ(愛知県豊田市)など競合を大きく上回る見通しだ。

SLTは森本社長が川崎重工業勤務のかたわら、外部有志とともに空飛ぶクルマ開発プロジェクトを発足したことがきっかけで19年に設立。経済産業省の成長型中小企業等研究開発支援事業(Go―Tech事業)にも採択された。最大の課題である姿勢制御技術の確立では、千葉大学の野波健蔵名誉教授らの支援で開発を本格化。さらに京都工芸繊維大学の山川勝史教授と連携し、スーパーコンピューターによる解析シミュレーションも実施中だ。

日刊工業新聞 2022年11月15日

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