紙の100倍以上の高熱伝導性、東大がスゴい木質バイオマス素材を開発した
東京大学の塩見淳一郎教授らは、紙の100倍以上の高熱伝導性を持つ木質バイオマス素材を開発した。放熱性能を求められる高分子材料の代替として期待される。流体プロセスを使ってセルロースナノファイバー(CNF)を分子スケールで配向させ、酸で固めて糸材にする。植物から得られるCNFを高付加価値化、多様化し、脱プラスチックにつながる。東京都立産業技術高等専門学校、スウェーデン王立工科大学との共同研究。
2次元の微小流路にCNFの水分散液を注入してCNFの結晶構造を特定の軸方向にそろえながら酸を加えて固め、自然乾燥してCNF糸を作成した。
このCNF糸は熱伝導率が1メートルケルビン当たり14・5ワットで、セルロースナノペーパーなど先端木質バイオマスと比べても5倍以上の高熱伝導性を示した。さらに、直径が小さい糸の方が全体に均一的に水素結合が形成され、高熱伝導率を示すことが分かった。CNFの配向度が一定レベルになると、CNF間をつなぐ水素結合が多く、残留応力によって生じる構造不秩序性が低い方が高い熱伝導性を得られる。
スマート機器やロボットに多く使われるフレキシブルプリント基板などへの活用が期待される。現在は再生処理が難しく環境負荷の高いポリイミドなどが用いられている。
日刊工業新聞 2022年11月01日