「9年間一貫」のキャリア教育も。長岡技科大のデータサイエンス人材育成
【実践的な授業】
数理・データサイエンス(DS)教育強化拠点コンソーシアムの協力校の1校である長岡技術科学大学は、2019年度から同コンソーシアムの事業に参加している。同大は実践的な技術者を作ることを目的としている。大学3年生以上の学生に対し、市場のリアルなデータを使い特定の問題を解く実践的な授業を20年9月から始めた。
【9年間一貫教育】
数理・データサイエンス教育研究センターの湯川高志センター長は「高度技術者としてDSや人工知能(AI)の手法を使えるようにし、現場の生産性や品質の向上に貢献する人材を育てたい」と強調する。
同大は工学系を中心に2500人の学生が所属する。全学生数の8割を占める大学3年次編入の高等専門学校出身者は、高専5年間と大学3年次から大学院修士課程修了までの4年間を合わせ、合計9年間をかけて技術者のキャリア教育を受ける。
9年間の一貫教育の流れを作り出しているのは大学と高専との強いパイプにある。同大を含む6大学と全国の高専41校で構成されるコンソーシアム「eラーニング高等教育連携(eHELP)」は単位互換協定を結び、相互にeラーニングの科目を配信している。湯川センター長は「自分の大学だけでなく、高専の教育コンテンツを作ることを目的としている。協力して技術者を育てる」と意気込む。
19年からは数理DSの授業をeラーニングで配信する取り組みを開始。21年9月からは同大学での対面授業と同様の内容をeHELPに参加する高専にeラーニングで配信する。
【全学共通の認識】
一方、入学した大学生に向け、2年次にリテラシーと動機付けのための授業を21年9月から始める。機械や電気などの分野の技術開発現場でDSやAIの利用事例を示し、学習内容と実際の仕事とのつながりを教える。「学習内容と自分の専門とのつながりを伝えることで、将来の技術者になるための道筋を示す」(湯川センター長)としている。
現時点での課題として「数理DSが重要であることは全学共通の認識となっているが、学科間で温度差がある」(同)とみる。全学科でリテラシー科目を強化するなど、数年以内で大学全体のカリキュラムの見直しを検討している。