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JR各社は業績悪化…コロナで岐路に立つ鉄道ビジネス、成長路線はどこか

JR各社は業績悪化…コロナで岐路に立つ鉄道ビジネス、成長路線はどこか

鉄道開業150年を迎えた22年は、鉄道のあり方があらためて問われた年となった(東海道新幹線開業時の東京駅)

鉄道開業150年を迎えた2022年は、公共交通としての鉄道のあり方があらためて問われた年となった。コロナ禍で利用者数などが低迷する中、JR各社などの業績も悪化。地方路線の存続が焦点になった。一方で業務の効率化や他の鉄道会社との協業などの動きも活発化する。岐路に立つ鉄道ビジネスは、成長路線へと進行できるか。(総合1参照 編集委員・小川淳、名古屋・永原尚大、大阪・市川哲寛、西部・三苫能徳)

コロナ後も定期券収入戻らず 都市路線が支える構図限界

「コロナ禍が収束しても、定期券収入が元に戻ることはないだろう」―。JR各社は口をそろえる。

新型コロナウイルスの感染拡大で人流の行動制限などが相次いだ結果、定期券収入を中心に鉄道各社の売り上げは大きく落ち込んだ。JR上場4社の2022年3月期連結決算はJR九州を除く3社が2期連続の当期赤字となった。23年3月期は4社とも黒字を見込むものの、テレワークの進展など働き方改革が浸透しており、定期券収入がコロナ禍前の水準に戻るのは難しい。また新幹線など長距離移動の需要もコロナ禍前に届いていない。

このため都市部などの黒字路線の収益でローカル鉄道の赤字路線を支える「内部補填」の構図が崩れつつあり、JR各社は利用者の少ない路線の収支の公表を始め、理解を求めている。

都市部の黒字路線の収益でローカル鉄道の赤字路線を支える「内部補填」の構図は崩れつつある(ローカル3路線が乗り入れるJR西の岡山県の津山駅)

公表済みのJR北海道、JR四国、JR九州に続き、JR西日本は4月に公表。17路線30区間すべてで営業赤字だった。芸備線や木次線、姫新線など中国地方山間部を走る路線を中心に輸送密度(1キロメートル当たりの1日平均旅客輸送人員)が数百人以下に低迷し、100円の収入を得るのに必要な費用の営業係数が数千円となるなど、厳しい経営状況が続く。ただ、「地域課題として検討してほしい」(長谷川一明社長)とし、廃線ありきではなく、持続可能策や公共交通機関としてのあり方などを模索する。

JR東日本も7月に公表し、35路線66区間すべてが営業赤字だった。JR東海は収支を公表していない。

これと並行し、7月にはローカル鉄道のあり方を議論する国土交通省の有識者検討会が提言をまとめた。輸送密度が1000人未満などの区間は国が協議会を設置し、沿線自治体と鉄道会社とでバス高速輸送システム(BRT)やバスへの転換も含めた地域モビリティーのあり方について3年以内に結論を出すことを求めた。

コロナ禍を引き金に本格的な議論が始まったローカル鉄道のあり方だが、実際は人口減少や地方の衰退、高速道路との競合など以前から危機的な状況が続いており、「コロナ禍を機に課題が顕在化した」(国交省鉄道局)格好だ。

地方路線存続が焦点

地方では車社会が浸透し、野村総合研究所が3月に公表したリポートでは、ローカル鉄道沿線住民約1万人を対象にしたアンケートで、75%が最寄りのローカル鉄道を「ほぼ利用しない」と回答するなど、今後も大幅な需要増は見込めない。一方、86%は将来的に自身が高齢となれば「自家用車を運転し続けることに不安がある」と回答しており、地域公共交通自体が否定されているわけではない。

国、自治体、鉄道会社、沿線住民が膝をつき合わせ、各沿線の実態に沿った鉄道にこだわらない地域公共交通のあり方を模索する時期が来ている。

事業効率化・需要創出カギ 山手線で自動運転実証

鉄道収入が今後も伸び悩むと予想される中、鉄道各社にとって目下の経営課題の一つは事業の効率化と需要の創出だ。

JR東日本は23年3月に平日朝の通勤ピーク時間帯(90分)を避けて利用すれば料金を約10%安くする「オフピーク定期券」の導入を目指す。通常の定期券は現行より約1・4%値上げする。深沢祐二社長は「価格差を設けて利用のシフトを促したい」と導入の意図を述べる。試算では約5%の乗客がシフトすると想定。JR西日本も導入を検討する。

野村総研コンサルティング事業本部の川手魁シニアコンサルタントは、「導入を進める鉄道会社は中長期的視点で考えている。コロナ禍前に定期券収入が戻らない中、人口減少も踏まえて鉄道事業の効率化を考えており、オフピーク定期券の導入もその一環。ピーク時間の人流が減れば、列車の運行本数を減らしたり、運営にあたる駅員を減らせるなど効率化につながる可能性がある」と説明する。

またJR東日本は11日からJR山手線で乗客を乗せた営業列車で自動運転の実証運転を開始。中長期的な運転士の人手不足解消を目指したもので、将来的には運転士が乗らない「ドライバーレス運転」を実用化する。このほか5日には西武鉄道と鉄道技術分野の協力を強化する覚書を締結。新技術を導入する際の仕様共通化など設備導入の迅速化や開発コスト低減に取り組む。

他の交通機関と連携し相互補完

JR九州と西日本鉄道は運輸サービスの利便性向上で提携する。JR戸畑駅の「みどりの窓口」隣に入居した西鉄バスの定期券発売窓口(2月のオープン時)

一方、他の交通機関と連携して地域交通網を充実させるのはJR九州だ。西日本鉄道と連携し、西鉄グループのバス網を含めた多様な交通モードを結節し、補完し合う。MaaS(乗り物のサービス化)アプリの活用を柱に据えるとともに、運用面でも工夫する。

JR下曽根駅(北九州市小倉南区)では、駅構内とバス車内でJR線と西鉄バスの乗り換えを相互に案内。JR戸畑駅(同戸畑区)では「みどりの窓口」隣に西鉄バスの定期券発売窓口が移転した。いずれも従来は考えられなかった光景で、利用者目線を取り入れた。21年7月には両社や地域の商業施設の買い物券と組み合わせた共通デジタル乗車券をアプリで発売するなど、移動需要を創出。自動運転など次世代技術の活用を含め、地域での交通機関の両輪として存在感を高めあう。

JR東海は名古屋駅と高山駅を結ぶ特急「ひだ」で新型車両「HC85系」を導入した。インバウンド需要の取り込みを狙う

また、JR西日本では「地方中核都市を元気にしないと移動需要は生まれない」(長谷川社長)と、24年春に地域の食や文化などの紹介イベントスペースを設けた新たな観光列車を福井県の敦賀と兵庫県の城崎温泉を結ぶルートに投入するなど、地方での観光需要創出に力を入れる。

JR東海も7月に名古屋駅と高山駅(岐阜県高山市)を結ぶ特急「ひだ」で新型車両「HC85系」を投入した。インバウンド(訪日外国人)需要の取り込みを期待しており、金子慎社長は「外国からの受け入れが増えていく時期に合わせた新鋭車両の投入で、復活の契機にしたい」と意気込みを述べている。

日刊工業新聞2022年10月14日

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