50年前のユーミンの声が蘇る。東大などがAIで再現
過去音源を現代の水準に
東京大学の高道慎之介助教と丹治尚子学術専門職員らは東映ツークン研究所と、人工知能(AI)技術で50年前の荒井由実氏の歌声を再現した。限られた音資料から声色や歌いまわしを再現する。この歌声は松任谷由実氏のアルバムに採用された。過去の音楽資産を現代の音楽技術水準に引き上げて再生させることで歌謡文化の発展につなげる。
テキスト音声合成と歌声合成、歌声変換の3段階を一括処理するAIモデルを開発した。大規模な話声データから読み上げ音声らしさ、歌声データから歌声らしさを学習する。生成された歌声を当時の歌声に変換する。
学習データを用意するために音資料の半自動編集技術を開発した。歌声の抑揚のゆらぎを抑えるようにデータをそろえる。ゆらぎは歌手の特徴になるが機械学習で扱うのは難しい。歌声変換の部分で歌唱者の歌声をもとに当時の韻律や声色を再現した。
再現歌声は荒井由実と松任谷由実のデュエット曲として収録された。今後、幅広い音声言語文化に技術を展開していく。
日刊工業新聞2022年10月5日