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旭化成が「バイオガス精製システム」事業化へ、拡大する市場を狙う

旭化成は2025―26年に、バイオガスから高純度なメタンと二酸化炭素(CO2)を精製するシステムの事業化を目指す。非化石資源から天然ガス代替となるメタンなどを製造する技術として訴求する。15日に岡山県倉敷市と包括連携協定を結び、同市内で実際のバイオガスを用いた実証実験を始めると発表した。自治体との連携で開発を加速する。(梶原洵子)

バイオガスは下水汚泥や畜産ふん尿などを発酵して得られるメタン60%とCO240%の混合気体。現在はそのまま発電に使われるが、高純度メタンは天然ガス代替に利用できる。発電に使ってもエネルギー効率が高い。バイオガス発酵の普及する欧州では精製への移行のため、補助金を整備する動きもある。旭化成は「精製装置市場は欧米中心に拡大し、30―40年頃に2500億―4500億円となる」と予想する。

旭化成の「バイオガス精製システム」は、CO2を選択的に吸着する新開発のゼオライトをCO2分離に用いる。ゼオライトは微細な孔が規則的に並んだ構造の素材。開発材の孔はCO2がぴったり入り、メタンは入らない。メタンを高効率に回収し、高純度CO2も得られる。

同システムではゼオライトを充填した管にバイオガスを通し、CO2を除去する。メタンを純度97%、CO2を同98・5%以上とする装置に仕上げる。CO2は液炭やドライアイス、化学品原料への利用を想定する。

実証では倉敷市の下水処理場に精製システムを設置し、同処理場で発生したバイオガスを使って性能を評価する。分離ガスは混合して元の状態に戻し既存設備で発電に使う。実際のガスで実証し、装置の大型化に必要な要件を抽出する。運転開始は23年末の予定。倉敷市は実証の協力を通じ、世界のCO2排出削減対策へ貢献する。

世界では複数のCO2回収技術が開発されている。ゼオライトは高濃度CO2に向き、アミンによる化学吸着法は低濃度CO2の大規模回収に向く。


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日刊工業新聞2022年9月16日

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