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パーム油製造の環境負荷低減に挑む国研法人、プロジェクトリーダーが語る狙い

パーム油製造の環境負荷低減に挑む国研法人、プロジェクトリーダーが語る狙い

マレーシアOPT実証プラント

国際農林水産業研究センター(JIRCAS)はIHIなどと共同で、インドネシアやマレーシアなど、主に東南アジアで生産されるパーム油の製造工程における環境負荷の低減に取り組んでいる。パームヤシの栽培サイクルは約25年とされており、伐採後、古木(OPT)を放置したままにすると、樹液に糖分を含むため腐敗でメタンガスを放出し、土壌汚染が懸念される。加工工場では搾油工程からの排水(POME)に有機物が含まれるなどして水質汚染が問題になっていた。

プロジェクトは膨大な残渣(廃棄物)や排水の適正処理、再生利用について総合的な処理を目指すもので、廃棄物を有価物に変え、環境負荷の軽減につなげる。JIRCASの小杉昭彦生物資源・利用領域プロジェクトリーダーはプラント開発などを通じて「パームの古木からペレット化などを通じ、付加価値のあるものに変えることが狙いだ」と話す。

パームヤシ資源を使い切ることで事業性の向上にもつなげる

IHIが中心となり、OPTから糖分を取り出す。そこから主にメタンガスを中心としたバイオガスを取り出して熱電などに利用し、プラントのゼロエミッション化に成功した。その工程で加工されるOPT繊維により、良質で持続可能性の高い燃料ペレットの製造も実現した。

POMEから油分を回収・処理する技術を付加し、搾油効率を高めた。マルチ化プロセスを開発したことで、パーム産業における環境負荷の低減につなげた。IHIの山下雅治資源エネルギー環境事業領域カーボンソリューションSBU技術センター基本設計部主査は「OPTなど原料となるパームバイオマスをいかに安価、安定して調達できるかが大事だ」と語る。

植物油脂の総生産量は約2億トン強とされ、このうちパーム油の生産量は約37%を占める。富士経済エコソリューションビジネスユニットの船橋里美さんは「今後、植物油脂は人口増などで約3億トン程度必要とする指摘もある」と説明する。JIRCASの取り組みは持続可能性と生産性の高い産業への移行に貢献していく。

日刊工業新聞2022年1月11日

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