染色端材が生まれ変わる。DIYから農業まで用途拡大
伸和(滋賀県野洲市、今井貢社長)は、合成繊維の経編(たてあみ)・丸編生地の起毛・染色加工などを手がける。染色加工の仕上げ工程で出る大量の端材を有効活用する取り組みを2021年秋から始めた。
中国のゴミ輸入禁止政策などから、端材の受け入れ先が減ってきたことがきっかけだった。社員から「端材を販売してみては」という提案から始まり、ひも状の染色端材をボール状に巻き取った『ひも子』が誕生。地元自治体などの協力を得て、JR守山駅前で定期的に開催されている朝市で試験的に10個販売したところ、瞬く間に完売した。
購入者に使い道を聞くと、バッグや草履、タペストリーを作る生地にしているという。直接会社への問い合わせがあるなど、思わぬ反響があった。
現在は徐々に販売網を拡大中。びわ湖での船舶運航などを手がける琵琶湖汽船(大津市)が運営する小売店での販売が決まった。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に取り組む企業が増え、地域の小売店でも“SDGsコーナー”を設ける動きがあるという。
琵琶湖汽船の小売店では滋賀県の特産品などを取り扱っており、三井アウトレットパーク滋賀竜王(滋賀県竜王町)や、浜大津アーカス(大津市)に出店している店舗で販売する。
一方で、見えてきた課題もある。伸和の工場から出る染色端材は1カ月で1トン強。この内『ひも子』に生まれ変わるのは約30キログラムと、1割にも満たない。端材の8割は白色と黒色で、生活雑貨やアート向けには使いづらい。
そこで、次のターゲットに据えるのは農業だ。今井社長は「農作物を育てる際に家庭菜園で使われる支柱よりも、ひもの方が多く使われるという。色に関係なく大量に使ってもらえるかもしれない」と期待を寄せる。
滋賀県の湖南・湖西地域を取りまとめるレーク滋賀農業協同組合の営農経済本部(滋賀県守山市)と話を進め、染色端材の農業分野展開を視野に入れる。