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日本農薬がインドで殺虫剤原体の生産を本格化する理由

日本農薬がインドで殺虫剤原体の生産を本格化する理由

トビイロウンカは稲を吸汁して枯死させる「坪枯れ」の被害を引き起こす(イメージ)

日本農薬はインドで水稲用殺虫剤の原体の生産を本格化する。現地子会社のハムナバード工場(カルナタカ州)内に新しいプラントを建設し、2022年末の稼働を予定する。生産能力は年間約200トンで投資額は約10億円。インドは人口増による食糧需要拡大に伴い農薬市場の成長が見込まれており、日本農薬は新原体の少量生産から量産に移行する。

新プラントで生産するのは水稲用殺虫剤「オーケストラ」の有効成分となる「ベンズピリモキサン」。オーケストラはウンカ類やツマグロヨコバイに防除効果を示し、海外飛来や既存剤に抵抗性を持つ害虫にも有効。天敵や有用昆虫に対する影響が小さく、哺乳類や水生生物に対する安全性が高いとされる。

インドは水稲栽培面積が日本の約30倍と広大で東部と南部を中心にコメが栽培されている。病害虫を防除するための農薬需要に対応。インドにおけるオーケストラの売り上げについて30年をめどに年間約60億円を目指す。

新プラントはベンズピリモキサンを主に生産するが、将来は他原体の取り扱いも検討するという。

近年、西日本を中心にウンカ類の被害が発生しているほか、アジアでも既存農薬への抵抗性を持つ害虫への対応が課題になっている。日本農薬は今後、日本とインドを中心にオーケストラの普及を図る。また、アジア各国の特性に沿った複合剤の開発も計画する。

日刊工業新聞2022年8月11日

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