負債総額1兆円超のマレリが再建計画確定へ、大企業の「簡易再生」成否占う

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経営再建中のマレリホールディングス(HD)の再建計画が来週にも東京地方裁判所で確定する見通しだ。私的整理の一種である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を断念し、法的整理の「簡易再生」に移行した初めての事例とみられる。2021年の法改正で可能になった“移行スキーム”の結果、マレリの経営再建につながるかが焦点となる。(日下宗大、編集委員・池田勝敏)

6月24日に都内で開かれたマレリの第3回債権者会議。ADRに向けた再建計画案について決議したが、必要な全26金融機関の賛同を得られなかった。計画案は金融機関による約4500億円の債権放棄などが柱。法的リスクを恐れた中国系銀行が同意しなかった。

当日参加した金融関係の担当者は「ショックだった」と明かす。中国系銀の出方は「ギリギリまで分からなかった」(邦銀関係者)。同日昼過ぎに中国系銀が意思表示を明確にしたとみられ、邦銀各行の担当部署は「夕方の会議開始直前まで慌ただしかった」(別の関係者)。

ADR不成立を受けてマレリは簡易再生手続きに移行。21年の改正産業競争力強化法により移行が可能となった。簡易再生はADRで議論した計画案を原則引き継ぎ、債権者の多数決で成立できる。マレリの計画案は7月の債権者集会で過半の同意を得て可決した。

経済産業省の幹部は「法改正でADRの再生計画を考慮できるようにしたのは、債権者会議の議論を無駄にしないのが目的だ」と解説し、「散々議論したのに駄目にするのは良くない」とする。ただマレリは負債総額が1兆円超で、製造業では過去最大級の経営破綻。「まさか同社が(手続き移行する)第1号になるとは思わなかった」と、経産省にとって想定外だった。

ADRから簡易再生への移行は、金融機関にとっても初の対応事例だ。ある邦銀幹部は「ADRでも簡易再生でも銀行のスタンスは同じだ」という。一方、別の邦銀関係者は「ADRは『全行同意』、簡易再生は『多数決』という大きな違いがある」と強調し、「利点と欠点を再整理し、検証する必要がある」と話す。

例えばADRの議論で債権者の一部が同意しなかった計画案をどう評価するか。今回は中国系銀が不同意だったが、もし債権者全員が邦銀で一部の銀行が反対した場合、「そのまま(スムーズに)簡易再生手続きへ移行できただろうか」と関係者は疑問を呈する。続会を設けて計画案の修正に動くのが本筋だと指摘する。

マレリの親会社で再建計画のスポンサーでもある米投資ファンドのKKRにも厳しい目が注がれる。マレリの経営陣について、金融筋からは「(主要取引先の)日産自動車としっかり交渉できる人材をKKRが選ぶ必要があるのではないか。日産出身者では難しい」との見方がある。

仮に簡易再生が失敗し、マレリが二次破綻にでもなれば「『そのままの再生計画(簡易再生に引き継がれた計画)では、やはりうまくいかなかったのでは』となる」(邦銀関係者)と指摘する向きはあり、移行スキーム自体の不信感につながりかねない。自動車業界は部品不足が長引き減産が相次ぐ逆風下にあるが、リストラなど「自助努力をしっかり行わせる」(同)ことができるかが課題となる。


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日刊工業新聞2022年8月5日

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