駆動モーターシステムを征するものがEV市場で優位に!自動車部品業界で起こる大競争
自動車部品メーカー各社が、電気自動車(EV)用の駆動モーターシステム「eアクスル」事業で攻勢をかける。電動化のほか、コネクテッドカー(つながる車)、自動運転など技術の新潮流で完成車メーカーには開発投資が重荷だ。モーター、インバーター、変速機(ギア)が一体となったeアクスルは開発費負担を低減できる利点があり、需要が高まっている。現在のeアクスル市場は中国が先行するが、今後は欧州などでも搭載車が増える。(日下宗大)
日本電産はeアクスルで2025年には250万台、30年には1000万台の販売を計画。中国工場での生産を強化している。欧州ではフランスの旧PSA(現ステランティス)との合弁会社で22―23年度の投入を予定している。将来的にはセルビアでの生産も検討する。
トヨタ自動車グループのブルーイーネクサス(愛知県安城市)もeアクスル事業の体制強化を図る。同社はデンソーとアイシンの共同出資会社だったが、20年にトヨタも出資した。グループの技術力を結集させ、商品の競争力を上げる狙いだ。
他にも明電舎は開発品を車メーカーに提案中で、各拠点で開発や生産の体制を整えた。日立アステモも商品開発を進めている。
海外ではeアクスルを含めた企業同士の合従連衡が起きている。カナダのマグナ・インターナショナルは韓国のLG電子と7月までに電動駆動部品の合弁会社を設立する。
eアクスル市場は25年が一つの節目だ。車載用電池の価格低下や、各国の環境規制を見越してEV車の需要が一気に増えると見られるからだ。日本電産は25年を「分水嶺(れい)」と位置付ける。モーターとインバーター技術を持つマレリ(さいたま市北区)も5年後を見据え、ギア技術を持つメーカーと協業してeアクスル事業の本格参入を決めた。
eアクスル市場は現状、中国がリードする。一般的な車の開発期間は5年前後。これに対し「中国の車メーカーは2年から1年半のスパンで開発する」と富士経済(東京都中央区)の調査員の饗場知主任は指摘し、駆動領域の開発工数を短縮できるeアクスルは中国の開発スピードに合致していると解説する。
今後は欧州や北米、日本での需要拡大が期待される。まずは量産車(一般車)に搭載される見通し。これら3地域では「車メーカー自身がこだわって作る車種がある」(饗場主任)。その典型である高級車に、“標準品”であるeアクスルを採用する判断は当面見送られる公算が大きい。