負債1兆円…コロナ・減産直撃で私的整理へ、旧日産系・マレリの行方

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新型コロナや部品不足による自動車メーカーの減産がマレリを瀬戸際に追い込んだ

マレリ(さいたま市北区、デビッド・スランプ社長)が私的整理の一種である「裁判外紛争解決手続き(事業再生ADR)」の申請を含めた経営再建の検討に入った。自動車業界では新型コロナウイルス感染症拡大とともに、半導体をはじめとした部品供給不足で自動車メーカーは相次いで減産を実施。従前から収益面で課題があったマレリに追い打ちをかけた格好だ。銀行団や取引先メーカーとの交渉の行方に視線が注がれる。(西沢亮、日下宗大、冨井哲雄)

金融機関に支援要請

新型コロナや部品不足による自動車メーカーの減産がマレリを瀬戸際に追い込んだ。

「部品サプライヤーは完成車の“売り”が立たないと経営に影響が出る」と話すのはマレリと取引のあるサプライヤー幹部。「事業規模が大きくなったマレリは減産影響がなおさら大きくなった」。

マレリは2019年に旧カルソニックカンセイ(CK)と欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA、現ステランティス)の自動車部門の旧マニエッティ・マレリ(MM)が合併し、売上高は倍増した。ただ、コロナ禍前の合併当時から人員やコスト面で収益性の向上が課題となっていた。

19年には栃木県や山形県にある国内4工場を閉鎖すると発表。資産効率の引き上げを図った。旧CKと旧MMを合わせて世界で約140ある工場では生産性の底上げを目指し、急ピッチで生産技術の標準化などを進めてきた。

マレリの売上高で日産向けは5割程度とみられる。日産のハイブリッド車(HV)「ノート オーラ」

コロナ禍の20年12月には24年までの中期経営計画を公表した。そこでもCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)関連の開発や投資に重点を当てると同時に、「効率性とコスト競争力の強化」を掲げた。

ただ新型コロナと合わせて半導体や部品不足で主要取引先の日産自動車などの自動車メーカーでは減産が相次いだ。サプライヤーからは「固定費が重くのしかかる」といった声が広がる。

マレリも固定費の圧縮を加速した。21年に入り5月には本社ビルの売却を公表。さらに21年秋には世界で1000人規模の人員削減を計画していることが明らかになった。しかし車の生産台数が上向かない中、コスト削減にも限界があり、私的整理の検討に入ったと見られる。

マレリはCASE分野などで外部との協業を進めている。事業コストを抑えやすい協業戦略が今後の経営再建の鍵となりそうだ。

マレリは取引銀行に返済猶予などの金融支援を要請した。主力行のみずほ銀行など取引金融機関は事業再生ADRを活用するか、つなぎ融資をはじめ他の支援策にするか判断することになる。事業再生ADRを申請しても、事業再生計画案に債権者全員の同意が得られなければ法的整理を余儀なくされる。

20年12月期の金融機関からの借入金は約1兆1000億円を超え、担保は売掛金など約5000億円だ。みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガバンクは2日までにそろって大口取引先で与信関係費用を引き当ており、いずれもマレリ向けを計上したようだ。

新型コロナの感染拡大や部品調達の停滞で新車販売を思うように伸ばせない状況が続く自動車業界。マレリの主要取引先の日産自動車は21年3月期の世界販売台数が前期比17・8%減の約405万台に低迷。22年3月期は期初に440万台の世界販売見通しを掲げたが、長引く半導体不足の影響などで、60万台の下方修正を余儀なくされた。アシュワニ・グプタ日産最高執行責任者(COO)は安定した部品調達が難しい中「生産計画は週次ベースで動いている。新しい時代で生きるすべを学んだ」との認識を示す。

依存から逃れられず

一方、部品サプライヤーは安定しない生産計画への対応に追われる。日産と取引が多いあるサプライヤー幹部は「来月の台数が生産間際にならないと分からない」と嘆く。特に生産の挽回を織り込んだ計画に合わせ、原材料を確保し、人員を含めた生産体制を維持することは難しく「生産計画の乱高下が経営に与える影響は大きい」(同幹部)という。

別の部品サプライヤー幹部は半導体メーカーから「購入価格を倍にすれば供給しても良いと言われた」とし、部材調達価格の上昇も収益を圧迫する。同幹部は生産計画について「だまされ続けた2年だったが、誰も悪くない。生産台数への依存から逃れることはできず、経営体制の効率化を積み重ねるしかない」と前を向く。

生産計画の変動や資材調達価格の高騰は自動車業界全体に共通する。課題解決に向けトヨタ自動車は調達方式の見直しを推進。半期ごとに実施している部品価格の引き下げ要請を一定期間見送る検討のほか、同社の稼働調整に伴い余剰となった在庫や人員の費用負担も視野に、サプライヤー各社からの聞き取り調査を始めた。

日産はコロナ禍以前からの業績悪化もあり、サプライヤーとの関係見直しを進める。例えば新車開発のデザイン段階から調達先のサプライヤーを選ぶ仕組みを構築。開発初期から意見をすり合わせることでコストを削減し、その果実をサプライヤーと分け合う取り組みなどを進める。グプタCOOはサプライヤーとは「事業の継続性に向けて緊密に連携して支援していく」とした上で「台数だけでなく、価値をもとにした成長を実現できる関係を構築している」との認識を示した。

調達改革の成果を得る前に表面化した格好のマレリの経営課題。再建に向け日産には部品調達が難航する中、新車を計画通り立ち上げ、一台でも多く生産量を確保する取り組みが求められる。


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日刊工業新聞2022年2月16日記事から一部抜粋

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