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株式売却を前提にしない製造業のM&Aを手がけるセレンディップが見据える大きなテーマ

セレンディップ・ホールディングス(HD)はファンドでありながら、製造業に対してイグジット(出口)としての株式売却を前提としないM&A(合併・買収)を実施している。競争力はあるが単独では規模で見劣りする企業を傘下に入れ、経営や事業の基盤を共通化することで成長と生き残りにつなげる。「モノづくり企業の新しいグループ経営の形」を提示する。

同社は2014年以降、自動化設備メーカーの天竜精機(長野県駒ヶ根市)を皮切りに、自動変速機(AT)関連の自動車部品などを手がける佐藤工業(愛知県あま市)、車の内外装部品が主力の三井屋工業(同豊田市)を相次ぎ買収した。セレンディップの竹内在社長は「国際競争力がありサプライチェーン(供給網)の強い製造業で、売上高50億円以上の企業が対象」と説明する。車業界はその代表だ。

セレンディップのグループ経営は、傘下企業に横串を刺す経営管理基盤とモノづくり基盤を提供し、事業の効率化と拡大を図る点を特徴とする。ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス(GRC)に対する企業ごとの差を統一した上で、品質管理や生産管理など、主に生産活動に重点を置いて汎用化した仕組みを各社に展開する。例えば天竜精機は他社の効率化策を導入することで、生産性が20%向上した。グループ各社は10―20%の原価改善を実現しているという。竹内社長は「コストカットの先には何も残らない。足腰を強くすればモノづくりの力は上がる」と断言する。

見据える大きなテーマは、モノづくり企業の再編だ。産業構造の激変期を前に、竹内社長は「日本は単位の小さな中小企業が多い。このままいけば総倒れになり、今後10年もたないのでは」と危機感を示す。

今後も自動車を主要領域とし、電動化でも普遍性のある内外装や電装系企業をM&Aしていく方針。このほか生産自動化や検査装置、医療機器といった分野も有力候補だ。セレンディップ傘下の企業同士のほか、傘下企業自身によるM&Aなども視野に、共通の基盤を軸とした統合効果で競争力強化を図る。

日刊工業新聞2022年5月19日

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