【ディープテックを追え】脳波でマーケティング、ニューロマーケティングとは?
脳科学と情報通信(IT)を融合した「ブレインテック」が盛り上げりを見せている。イーロン・マスクが率いる米ニューラリンクなどは、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を開発する。計測した脳波を使い、人の意識を可視化する取り組みも進む。サンドボックス(東京都文京区)は脳波をマーケティングにいかす。
脳波を使ったマーケティング
脳波を使ったマーケティングは「ニューロマーケティング」と呼ばれる。計測した脳波から人の好感度やストレスなどを可視化する。これまでの調査では言語化が難しかった感情や直感的な判断を数値化することで、マーケティングにいかすことを指す。
サンドボックスは食品の香りなどの領域で、人の感情を可視化する「ノウミーリサーチ」を手がける。被験者が商材を使っている際の脳波を計測機器で測定。ここから得られたデータから、被験者の商材に対する好感や興味、ストレスなどの感情を解析する。この解析データをメーカーは販売前の商材の絞り込みに活用する。すでに食品メーカーから新商品のフレーバー候補やテレビCMなどで、脳波データの解析を行ったという。
人の視線をAIで予測
2022年4月からは人工知能(AI)で人の視線を予測するソフトウエアの提供を始めた。人の視線が注目するメカニズムをAIに学習させ、実現する。テレビCMの動画や商品陳列の画像などをソフトウエアにアップロードとすると、AIが色や明るさなどから人が注目するポイントを解析。ヒートマップの形で示す。従来、人の視線を計測しようと思えば、眼球の動きを記録するカメラなどが必要で高額だった。また、複数の被験者を集める点や分析に時間がかかる点も負荷になっていた。現在の予測精度について、 菊地秋人最高経営責任者(CEO)は「実際の視線と比べて予測でも約8割は予測できる」と説明する。月額5万円(税別)のSaaS(サービスとしてのソフトウエア)方式で提供する。小売店の陳列棚など、頻繁に入れ替わる場面において需要があると見込む。
また、将来は販売時点情報管理(POS)システムなど販売情報と視線予測、脳波のデータを組み合わせ、売り上げ増加につながる商品陳列をAIが提案できる機能を構想する。三菱総合研究所はブレインテックの市場が24年には20年比で2割増となる5兆円程度になると予想する。約8割を占めるのは医療・ヘルスケアだが、ARなどのデバイスで脳波を測定できるようになれば非医療分野の伸長も見込める。同社は脳波のデータが売り上げ増加につながる事例が出れば、利用が進むと予想する。今なお謎多き、脳のデータを活用する動きは今後も続きそうだ。
〈関連記事〉これまでの【ディープテックを追え】