プログラミング不要、製造ラインの不良品削減するAIの実力
コグネックス(東京都文京区、ロバート・ウィレット社長)は、人工知能(AI)で製造ラインの不良品削減に取り組んでいる。同社が手がけるのは深層学習(ディープラーニング)に基づく画像処理向けソフトウエア。外観検査用途では不良をはじくだけでなく、そもそも不良を作らないための活用にニーズが広がっている。プログラミング不要の製品開発・提供を始めるなどAIの裾野を広げ、不良を出さないモノづくりを支援する。
コグネックスは1981年に設立した米コグネックスの日本法人。これまで蓄積した画像処理技術と4年以上かけ磨き上げたディープラーニングを掛け合わせた製品群が強みだ。カメラを含む画像処理システム「In―Sight D900」を中心に展開する。自動車部品工場や食品工場などで外観検査、不良の分類、ワーク(対象物)の位置決めなどに活用されている。
従来の外観検査は、ルールベースと呼ばれる方式が一般的だった。例えば、家とは何かを子どもに教える際に、ルールベースは「家とは屋根があるもの」と決まり事で教える。一方で、ディープラーニングは多くの家の写真を見せて具体例で教えるものだという。ルールベースは良・不良の判断基準は設定できるが、不良の分類には細かいルールの設定や検出方法の検討が必要で活用が難しい。川田正之プロダクトマーケティング部部長は「良・不良しか分からないのに外観検査に投資が必要かと疑問視する声もあった」と明かす。
だが、不良を分類できるディープラーニングが活用されると意識は変わり始めた。不良をはじくだけでなく、例えば「焦げ」の不良が多い場合は溶接の出力を変更するなど、生産工程の改善にも使える。何をどう調整するかは現場頼みだが、いずれは原因究明から対策まで自動化できる可能性もある。川田部長は「当社は画像処理で貢献する。ディープラーニングをもっと簡単に使えるようにする」と意気込む。
「工場などの現場で誰でも使えることが目標」と川田部長が話すように、同社の製品は少ない学習枚数で利用できるのが特徴だ。D900の追加機能「ViDi EL Classify」は分類したい対象物の画像を各2―3枚収集し、作成した分類項目に割り振って運用する。プログラミング不要でエンジニアや画像処理半導体(GPU)を搭載した高性能パソコンがなくても運用できる。2022年も複数の新製品を投入予定。使いやすいディープラーニングを追求するコグネックスの開発は続く。(熊川京花)