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ドコモ・アクセンチュアが模索、「メタバース」の商機はどこだ!

ドコモ・アクセンチュアが模索、「メタバース」の商機はどこだ!

世界最大規模のICT展示会「モバイル・ワールド・コングレス」でもメタバースが注目を浴びた(3月、スペイン・バルセロナ市=ブルームバーグ)

インターネット上の3次元(3D)仮想空間「メタバース」をめぐり、国内外の情報通信技術(ICT)大手が活発な動きを示している。米アクセンチュアはメタバース専門の新組織を創設。NTTドコモはウェブブラウザー(閲覧ソフト)で手軽に楽しめるサービスを始めた。メタバースの普及に伴って企業と顧客の関係は変化していくと考えられており、各社は今後も商機を模索する。(編集委員・斉藤実、斎藤弘和)

米アクセンチュア、専門の新組織創設

アクセンチュアは実世界と仮想空間が融合した体験の推進に向け、メタバース専門の新組織「メタバース・コンティニウム・ビジネスグループ」を創設した。同社はメタバースに関する600件の特許と10年以上の経験を持つ。また、独自のメタバース「Nth Floor(N階)」を運営。新入社員のオリエンテーションや、イマーシブ(没入)型研修などに活用している。

さらに、同社の調査報告「テクノロジービジョン2022」において、「デジタル化が進んだ社会や生活、ビジネスモデルの至るところにメタバースが遍在化することで、ビジネスや組織運営のあり方、顧客とのつながり方が再創造されつつある」と予測した。

この調査は日本を含む35カ国、4600人以上の企業経営層とIT担当幹部を対象に実施した。これによると、企業経営層やIT担当幹部の71%が「メタバースは自社にポジティブなインパクトをもたらす」と回答。インパクトの度合いで分けた内訳は、「革新的」が13%、「画期的」が28%、「段階的」が30%となった。

アクセンチュアは、将来のデジタルプラットフォーム(基盤)では一貫した体験を提供し、異なる基盤や空間における顧客データの相互運用を実現する必要があると指摘。「インターネットの再創造が進む中、企業は次の波に備える必要がある」と提言している。

ドコモ、ブラウザー対応でスマホでも

国内ICT企業もメタバース関連の取り組みに力を注ぐ。NTTドコモはマルチデバイス型メタバース「XRワールド」を3月末に始めた。アプリケーション(応用ソフト)不要でウェブブラウザーから使える点が特徴。このためヘッドマウントディスプレー(HMD)を持たない人も、スマートフォンやタブレット端末、パソコンから気軽にメタバースを体感できる。

「XRワールド」におけるアバターのイメージ(ドコモ提供)

XRワールドでは、アバター(分身)を通して、利用者同士が相互にコミュニケーションを取りながら多様なコンテンツを楽しむ。サービス開始当初は、音楽関連のコンテンツから提供。今後は電子書籍を楽しめる空間の提供に向けた企画などを進めていく計画だ。XRワールドへの来訪者が増えれば、コンテンツ提供者などの協業企業と安定的に収益を分け合えるようになると期待される。

XRは仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった先端技術の総称で、ドコモは非通信領域の成長株と位置付けている。「XRではコンテンツから端末まで提供し、グローバルを見据えて市場を開拓していきたい」(井伊基之社長)。そうした総合力の発揮とともに、競合にない強みを確立していけるかも試される。

日刊工業新聞2022年4月26日

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