利用者は取られたら取り返す、携帯通信業界「仁義なき戦い」の背景事情

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携帯通信サービス「ラインモ」の広告。他社から乗り換えた場合、新規契約よりも特典額が多くなる

携帯通信事業者が、消費者保護を十分に考慮した販売活動を求められる状況が続いている。利用者のニーズに合わない高額の料金プランを契約させる事態への対策は進んだ一方、総務省は、通信会社が同業他社の利用者を奪う観点の競争が激しくなっていると指摘。通信サービスを乗り換える際の手数料の低減が競争激化を促した側面があり、通信各社や総務省には販売関連トラブルの防止策が改めて問われる。(編集委員・斎藤弘和)

「キャリア(大手通信事業者)から求められるポートイン(転入)評価指標が高くなっている。達成しないと、ショップ(販売代理店)に入る支援費が減ってしまう。ショップの運営を継続するには、利用者ニーズを逸脱した提案をせざるを得ない」―。総務省は9日に開いた有識者会議「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」で、同省にこうした情報が寄せられていると説明した。

総務省は2021年9月、ウェブ上に「携帯電話販売代理店に関する情報提供窓口」を開設。代理店における不適切な行為や、それを助長していると思われる通信事業者の評価指標などの情報を収集してきた経緯がある。

従来、あまりデータ通信量を使わない消費者に対して代理店が大容量・高額のプランを契約させる事例があると指摘されていた。こうした事態を公正取引委員会も問題視し、携帯通信大手各社は21年10月に対応を報告。KDDIとソフトバンクは、大容量プランの販売契約数で代理店を評価する措置を止めたとした。NTTドコモは、この2社よりも早く撤廃済みだった。

一方、「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」構成員を務める野村総合研究所の北俊一パートナーは「販売現場は今、ポートイン獲得競争になっている。他社から取られたら取り返す、“仁義なき戦い”の様相だ」と述べた。実際、携帯通信サービス関連のウェブ広告では、他社から乗り換える消費者に新規契約者よりも多くの特典を与えるといった内容が散見される。

北氏は「背景には、スイッチング(乗り換え)円滑化がうまく機能している事がある」と分析する。総務省は携帯通信会社を変更しても従来の番号を使える同番号移行制度(MNP)について、消費者がウェブで手続きをする場合は無料に、対面や電話で行う場合は1000円以下にする指針を策定。21年4月1日から適用した。

この指針の適用前や適用直後には、乗り換え促進の効果は限定的との見方もあったが、徐々に実効性が出てきているようだ。民間のIT調査会社からもMNP原則無料化について「認知度が上がってきた」「利用が少しずつ増えているのでは」との声が聞かれる。

だが「なりふり構わぬポートイン獲得競争によって消費者トラブルが増加しないか、注視が必要」(北氏)。今後も通信事業者は、顧客のニーズに合った販売活動をしているのか厳しく問われ続けそうだ。

日刊工業新聞2022年3月11日

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