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グループ再編したNTT、“苦手な変革”を実行できるか

「シナジー(相乗効果)を出しやすいグループ会社が来るので、それを活用して能力を高めたり、海外へ展開したり、新領域を開拓したりなど、積極的な活動が求められる」。澤田純NTT社長は、“ドコモコムコム”の統合について、こう語る。1月1日付で、中核事業会社のNTTドコモがNTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェア(東京都港区)を子会社化した。

この再編の利点としては、法人事業の拡大が見込める。ドコモは大企業向けのIT基盤に強みを持つNTTコムとの連携を深め、固定通信と移動体通信を融合したサービスの展開を強化。法人事業の売上高を、2025年度に20年度比約25%増の2兆円へ引き上げる。加えて「既存の(通信設備などの)資産が大きいので、コスト削減の規模感も大きくなる点は評価できる部分だ」(SBI証券企業調査部の森行真司シニアアナリスト)。

一方、澤田NTT社長が期待する新領域の開拓は、一筋縄でいかない。ドコモは金融・決済など非通信の「スマートライフ事業」に力を注ぐものの、これにドコモコムコムの統合がどのような波及効果をもたらすかは見えにくい。通信を本業とする会社同士が組んでも、非通信の事業は生まれにくいだろう。

そこで自社グループにはない発想の取り込みが必要になるが、これをドコモは同業他社よりも苦手にしている。イノベーションリーダーズサミット実行委員会と経済産業省が18年から毎年発表している、スタートアップとの連携を通じた変革に積極的な大企業のランキングにおいて、ドコモはKDDIソフトバンクの後塵(こうじん)を拝してきた。SBI証券の森行氏は「NTTは、安心・安全を提供するという昔からの企業カラーを、なかなか変えられない」とみる。

NTTは20年には約4兆円を投じてドコモを完全子会社化し、ドコモは上場を廃止した。今回、NTTコムなどをドコモの傘下に置くことでグループ再編に一つの区切りがついた。今後、再編効果により費用を削減できれば、M&A(合併・買収)の余力が拡大することも事実。並行して従業員の意識改革を進め、攻めの文化を形成できるかが問われる。

日刊工業新聞2022年1月27日

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