19年ぶり戦略改定、東京都スタートアップ支援拡充の中身
東京都はスタートアップの知的財産活用について支援を強化する。中小企業の知財活用に関する戦略を19年ぶりに月内に改定する。スタートアップが興隆している現状を踏まえ、これら企業をイノベーション創出や経済成長の起点と明確に位置づけ、成長段階に合わせた重層的な支援を講じる構えだ。
スタートアップをめぐっては岸田文雄首相も2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけるなど、政策的な後押しや市場環境が整いつつある。都としても技術革新の動向や社会情勢の変化を踏まえた体制整備にかじを切る。
具体的には、優れた技術やノウハウを持ちながらも知的財産の活用に課題を抱えるスタートアップに専門家を派遣する「ハンズオン支援」を23年度にも始める。知財戦略の策定からコア技術の見極め、改良、さらには出願、権利化といった一連の流れを中長期的に後押しする。先端技術を活用した権利取得に対しては、人工知能(AI)やビッグデータといった分野に精通した弁理士などによる専門支援も視野にある。
スタートアップは独創的な技術やアイデアなどの競争優位性を持ちながらも、創業間もないことから社内体制の整備や資金調達が優先され、知財に経営資源を投じる余力に乏しいケースが少なくない。
一方でグローバル競争が激化する中、製品やサービスの高付加価値化を通じた差別化策や、オープンイノベーションを進める上で、知財の持つ意味合いは増している。とりわけ、特許や商標権などの個別の権利取得や活用にとどまらず、ブランドやノウハウ、自社の人的資源も含めた「知的資産」と広範に捉え、経営戦略として活用する意義も指摘されている。
こうした潮流を捉え、都も今後の施策の方向性を「企業の経営戦略の中軸として知財戦略を位置づけることを前提とする」としている。
知財に「関心」6割超
都が21年10月に都内652社を対象に実施した調査では、知財に「関心がある」「経営資源として不可欠」とするスタートアップ(創業10年以内の企業)は6割を超えた。いずれも一般的な中小企業の回答割合を上回る。
中でも他社や大学などとの連携に「関心がある」との回答は半数に上り、オープンイノベーションへの期待をうかがわせる。
一方で共同研究や連携に対しては、契約交渉や権利の帰属を不安視する向きがスタートアップに強いことも浮き彫りになった。
大企業とスタートアップの協業機会の拡大を見据え、政府はフェアな関係構築に向けた環境整備を進めている。経済産業省は公正取引委員会と共同でガイドラインを策定。共同研究開発の段階に沿って必要となる秘密保持契約や技術検証契約、ライセンス契約などのひな型を示すとともに、契約交渉で論点となるポイントも解説。「対等な関係が保証されることでスタートアップの潜在力は一層発揮される」(経済産業省)と期待を寄せている。