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美容ローラーを模倣品から守る攻めの知財戦略の中身

美容ローラーを模倣品から守る攻めの知財戦略の中身

MTGが手がける美容ローラー「リファ」。左が本物で右が模倣品

海外から年2万8538個流入

MTGは、美容ローラー「リファ」などの模倣品対策に力を入れる。リファは2020年9月期に関連商品を含めた売上高が136億円にまで成長した主力ブランド。美容ローラーは10年ごろから注目され始めた一方、売れ行きの良さと構造の簡単さに目をつけた違法業者による模倣品製造が横行する。模倣品のまん延は売上高減少のみならず、消費者に健康被害を与えかねない。製品が築き上げた信頼を守るため、攻めの知的財産戦略を展開する。(名古屋・永原尚大)

うり二つ

「どちらが本物のリファでしょうか」―。法務知的財産本部長の長谷川徳男執行役員が机上に並べた二つの美容ローラー。一つは本物、もうひとつは模倣品だ。金属製の光沢感や手触り、外箱から同封する取扱説明書に至るまですべてがうり二つ。一見して違いを判別することは難しい。

模倣品の説明書に記載の製品問い合わせ先に電話すると、驚くべきことにMTGのコールセンターにつながる。模倣品を購入した顧客が修理依頼で同社に問い合わせ、いざ持ち込むと模倣品だと発覚する事例が後を絶たない。

模倣品の多くは中国など海外から輸入され、19年には過去最多の2万8538個流入した。この広がりを防ぐには「税関での輸入差し止めが欠かせない」(実川一誠知的財産部長)と危機感を強める。

税関の活動を支援するため毎年、全国各地の税関を訪問し模倣品を見極めるポイントを解説するなど地道な活動を続ける。「積極的な活動が輸入差し止めに直結する」(長谷川執行役員)からだ。15年から差し止め点数が数千個単位で増加し、19年には1万1637個に上る大量輸入を阻止することができた。

コロナ禍で商流が変化する中、模倣品流通にも動きが見られた。「大量輸入から1個や2個といった少量の輸入が増えつつある」(実川部長)という。インターネット上のフリーマーケットサービスで、個人を装った模倣品販売業者の存在が指摘されている。試しに大阪府在住だという個人に発注したところ、中国から模倣品が郵送されてきた事例がある。

MTGの調査を通じて、中国の警察当局が模倣品製造業者を摘発した(中国・浙江省)

裁判すべて勝訴

この動きに対応するため、知的財産権の申請時に製品写真を添付している。「フリマサービスの担当者が模倣品の販売ページを削除しやすい」(同)効果がある。

さらに模倣品生産の根絶にも注力する。国内外のEC(電子商取引)サイトを監視し、製造販売者や拠点を特定して警察当局による関係者の逮捕や模倣品押収に協力している。

知的財産権侵害の訴訟も積極的だ。これまでの裁判では30件全てに勝訴した。「多額の賠償金を支払わせ、模倣品を作るうまみがないと思い知らせる」(長谷川執行役員)と、断固とした態度を示し続ける。

松下剛社長は「模倣品を絶対に許さない」として知的財産戦略への投資を惜しまない。知的財産部には全従業員の約1%に相当する12人を配置。「製造業としては充実した体制」(同)。攻めの知財戦略を推し進めることで、模倣品への抑止力を発揮し事業拡大につなげる。

日刊工業新聞2021年7月26日

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